コラム

トランプ氏が米ドルの「ライバル」である仮想通貨を推進してアメリカの「特権」を捨てる理由

2024年12月28日(土)12時20分
ドナルド・トランプ, 米経済, 仮想通貨, トランプ, ビットコイン, アメリカ

ビットコインのイベントでスピーチするトランプ次期米大統領(7月27日、米ナッシュビル)KEVIN WURM-REUTERS

<ビットコインなどの暗号資産は基本的に各国の通貨、特に米ドルとの利害が対立する。それでもトランプ氏が暗号資産推進派なのはなぜか?米出身芸人のパックンが解説します>

2024年の米大統領選以降に相場が急上昇し、10万ドルを突破したビットコインなどの「暗号資産(仮想通貨)」が非常に盛り上がっている。が、僕は昔から「アンチ派」なのだ。その主な理由はこちら:

・「仮想通貨」と名乗っているが、通貨としての機能性が低い
・匿名性が高く、マネーロンダリングや闇組織の資金繰りに使われがち
・ビジネスの発展を支える株式や債券などの「投資」と違い、基本的に何も生み出さない

どれも合理的な主張だと自負しているが、これだけではない。暗号資産を嫌う一番の理由はこちら:

・僕が持っていないから!!


10年以上前、友達にビットコインを勧められたが、上記の理由で「こんなもの、すぐ消えるだろう」と判断し、投資しなかったわけ。残念! あの時、賭けておけば今はどこかの島を持っているはず。四国とか。

特にアメリカは暗号資産を警戒すべきなのだが...

なぜ読みが外れたのだろうか。一番の理由は、政府が予想通りに動かなかったからだ。まず、世界の国々は経済、財政、通商などにおける政策のツールとして自国の通貨を発行するし、為替を通して交易のバランスを図っている。

自国の通貨のライバルとなるような存在は懸念されてしかるべき。少なくとも、それぞれの政府はマネーロンダリングや脱税防止のために暗号資産の透明化を義務付けると僕は推測した。そうすると暗号資産の魅力はかなり下がる。

論理的な思考だが、この見込みは全く外れた。まあ、僕も間違えることがある。先日、長男のニキビ薬で歯を磨いちゃったし。

読み違いは数年前に認めた。ただ、どう考えてもアメリカ政府が暗号資産の推進派に回ることはないだろう、アメリカ政府こそ、世界で一番、暗号資産の普及に反対するはずだと、ずっと思っていた。

なぜなら、米ドルは世界の基軸通貨だから。そのおかげで、超低金利でお金を借りられるし、経済制裁で足並みを揃えさせるなど、ドルベースの金融制度を強力な外交ツールに使えるのだ。他国にない、唯一無二のこの特権を自ら捨てるわけはない! と、思いきや......。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米陪審、737MAX墜落事故巡りボーイングに賠償評

ワールド

パリ同時多発攻撃から10年、仏大統領らが追悼式へ

ワールド

トランプ氏、つなぎ予算案に署名 政府機関閉鎖が解除

ビジネス

ガルフストリーム、中国のビジネスジェット需要は貿易
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story