コラム

こうすれば築地・豊洲問題は一発で解決!

2017年06月16日(金)15時40分

築地は世界に知られる日本の「おいしい」の代名詞 Issei Kato-REUTERS

<市場移転の議論が大詰めを迎えているが、豊洲行きにみんなが気乗りしないのはイメージの問題も大きい。それなら僕からとっておきの提案がある>

築地か豊洲か。それとも両方を活かす「アウフヘーベン」か。市場の移転をめぐる論争がますます過熱しているが、よければ僕からの提案をぜひ議論に加えてください。

築地は世界で知られている、日本の「おいしい」の代名詞。そのブランド力を捨てるわけにはいかない。ただ施設の老朽化も進み、食の安全を守るためにも移転計画が進められている。

移転先には最先端の技術を駆使したピカピカの新市場が待っているが、なかなか豊洲移転に都民は気乗りしていない。当然だ。地下水からは基準値100倍もの有害物質が検出されている。「人体に影響はない」「食の安全は保障できる」と言われても気持ちは晴れない。

これがイメージの格差。築地にも土壌汚染がある。汚水もある。水漏れもある。ないものは冷房ぐらいだ。常温の空間で鮮魚を売るのは先進国ではまず他で見ない。でも、築地は国内外で愛されている「食の聖地」とされる。

【参考記事】政治活動にほとんど参加しない日本の若者

一方、豊洲は聖地より地獄に近いイメージ。1年以上ずっと「豊洲問題」が大きく取り沙汰されているため、「豊洲=問題」という認識になったせいかもしれない。

でも冷静に考えると、地下水が食材に触れることもなかろう。空調、盛り土などの安全対策で科学的な問題は解決できるはず。(とりあえず、維持費の赤字や家賃設定などの 「価額」的な問題は別にしておこう)。残る課題はイメージ対策だ。

豊洲は築地からわずか3キロ余りしか離れていないし、市場が移転しても、同じ漁師が釣った魚を同じ卸業者が販売するとしたら、その味に変わりはないはず。でも、お寿司屋さんの看板に「築地直送」と書いてあれば食欲が湧くのに対して、「豊洲直送」となっていたら、たぶん暖簾をくぐらないだろう。これは論理よりイメージの問題ではないか。
 
そこで提案だ――豊洲市場を「新築地市場」と命名したらどうだろう?
 
昔ながらのブランド力を21世紀の設備に持ち込むのだ。これはなかなかおいしそうな響きではないだろうか。「新築地直送」と書いてあるお寿司屋さんには入る気になりそう。なんとなく、ネタの鮮度がさらに高い気がする。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アップル、新SiriにグーグルAI「ジェミニ」起用

ワールド

インテル、米政府による10%株式取得に合意=トラン

ワールド

カナダ、対米報復関税の多くを撤廃へ トランプ氏が歓

ビジネス

FRB議長、利下げに道 「慎重に進める」とも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子、ホッキョクグマが取った「まさかの行動」にSNS大爆笑
  • 3
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラドール2匹の深い絆
  • 4
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 5
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    海上ヴィラで撮影中、スマホが夜の海に落下...女性が…
  • 9
    抽象的で理解の難しい『2001年宇宙の旅』が世に残り…
  • 10
    【クイズ】格差を示す「ジニ係数」が世界で最も高い…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 9
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story