コラム

悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か

2025年11月16日(日)15時50分

国民感情と全然違う「政府見解」

台湾というのは日本人にとっては身近で親近感の持てる土地であり、中国とはまったく別モノ、と捉えている人がほとんどだろう。が、これは日本政府の公式見解とは大きく異なる。

日本と中国が国交を回復した際に表明した1972年の「日中共同声明」には、こう書かれている。

「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」

多くの日本人の国民感情とは裏腹に、日本政府の公式見解は、かなり中国寄りの姿勢を見せている。中国が「台湾は中国の一部である!」と表明しているのに対し、日本は「そうなんですね、中国がそういう考え方をしていることは十分理解しています。尊重しますよ」と言っている(とはいえ、中国の主張に完全同意したわけではない)。

その意味で「台湾は中国の一部であって、一部ではない」というべき奇妙な状態が続いている。ともあれ、中国政府と中国国民の頭のなかでは「台湾=中国の一部分」と強固に信じられており、台湾問題は自国の内政問題と認識されている。

ゆえに、中国は他国から台湾問題について触れられると、必ず激怒し報復的な行動を取る。これは従来の中国の言動を見ていれば、容易に想像の付くことだ。高市首相は、中国が激怒すると分かっていながら発言したなら三手先を読んで対応策を準備しておくべきだったし、何も予想せずに発言したなら、軽率というほかないだろう。

日本共産党は「首相は発言を撤回すべき」と主張しているが、そんなことできる訳がない。メンチの切り合いをしている時に「すまんかった」と急に詫びるヤクザはいない。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

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