コラム

日本初の「ゲイ議員」が誕生

2011年04月26日(火)18時39分

 統一地方選が終わったが、今回、日本で初めて同性愛者であることを公言する「ゲイ議員」が誕生した。東京・豊島区議の石川大我と中野区議の石坂わたるだ。

 性的少数者であるLGBT(レズビアンやゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の政治家としては、世田谷区議の上川あや(今回3期目の当選)が有名だ。彼女は生物学的な性別と本人が自認する性別が一致しない性同一性障害で、戸籍の性別も男から女に変えている。

 ニューズウィーク日本版は06年、「ゲイ in Japan」という特集を掲載した。「ゲイ人」レイザーラモンが「ふぉ~~」とやっていた頃である。その時に取材をさせてもらったのが石川で、当時は何人かの仲間と一緒に、ピアフレンズというゲイの若者向けの友達作りイベントを開催していた(ピアフレンズは今はNPO法人となり、その輪もずいぶん広がっている)。

 その後、NHKの番組に出演したり、千葉県の人権関係の委員を務めたりと少しずつ活動の場を広げる石川を見て、いつか政治家をめざすのだろうと密かに思っていた。

 しかし、同性愛者を公言して、政治の場に立つことはとても難しいことだと思う。色眼鏡で見られることもあるし、その当事者の権利拡大が第一義なのだろうと思われて支持が広がりにくい面もあるからだ(一般に同性愛者の割合は人口の5%くらいといわれる)。

 政策を訴えるうえで、多くの候補者は自らの経験や立場を強調する。例えば母親であること、介護の場で働いてきたこと、弁護士の経験......。すべて社会生活につながるものだが、これが同性愛者という立場の場合、どうしても「男が好きな男」「女が好きな女」と、いわゆる「性癖」としてとらえられがちだ。

 しかし同性愛をセックスの面からだけ考えるのは間違っている。結婚制度や家族制度という社会の基礎となるさまざまな制度がからんでくる話だし、お年寄りや障害のある人なども含めた広い意味での社会的弱者の問題にもつながる。

 世界的には同性愛を公言している政治家はけっこういる。仏パリのドラノエ市長(男)や独ベルリンのウォーウェライト市長(男)、米テキサス州ヒューストンのパーカー市長(女)、アイスランドのシグルザルドッティル首相(女、国家首脳として初めて同性結婚)などなど。彼らについての話を、ニュースや新聞で見たり読んだりしたことはあるはずだ。

 ところが、今回のゲイ議員誕生についてはあまりニュースになっていないような気がする。社会の変化の象徴として画期的な出来事だと思うのだが。


――編集部・大橋希


このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。編集コンセプトは、世界と日本をさまざまな視点から見つめる「複眼思考」。編集部ブログでは国際情勢や世界経済、海外エンターテインメントの話題を中心に、ネットの速報記事や新聞・テレビではつかみづらいニュースの意味、解説、分析、オピニオンなどを毎日お届けしていきます。

ニュース速報

ビジネス

寄り付きの日経平均は反発、1万9500円台回復 米

ビジネス

アングル:ECBの出口政策、テーパータントラム再燃

ワールド

相互に核の脅威と非難、軍縮会議で米朝応酬

ワールド

米、1100万ドル没収求め北朝鮮関連企業提訴 資金

MAGAZINE

特集:プーチンの新帝国

2017-8・29号(8/22発売)

内向きのトランプを尻目に中東、欧州そして北極へと「新帝国」拡大を目指すプーチン露大統領の野心と本心

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    トランプ ─ 北朝鮮時代に必読、5分でわかる国際関係論

  • 2

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 3

    英ケンブリッジ大学がチャイナ・マネーに負けた!----世界の未来像への警鐘

  • 4

    イルカの赤ちゃん、興奮した人間たちの自撮りでショ…

  • 5

    垂れ耳猫のスコフォがこの世から消える!? 動物愛…

  • 6

    北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

  • 7

    北朝鮮問題の背後で進むイラン核合意破棄

  • 8

    シャチがホホジロザメを餌にし始めた

  • 9

    バノン抜きのトランプ政権はどこに向かう?

  • 10

    有事想定の米韓軍事演習、北朝鮮「暗殺陰謀」と反発

  • 1

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 2

    イルカの赤ちゃん、興奮した人間たちの自撮りでショック死

  • 3

    「ゴースト」「ドイツの椅子」......ISISが好んだ7種の拷問

  • 4

    バルセロナで車暴走テロ、はねられて「宙に舞う」観…

  • 5

    北の譲歩は中国の中朝軍事同盟に関する威嚇が原因

  • 6

    自分に「三人称」で語りかけるだけ! 効果的な感情コ…

  • 7

    北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

  • 8

    垂れ耳猫のスコフォがこの世から消える!? 動物愛…

  • 9

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 10

    英グラビアモデルを誘拐した闇の犯罪集団「ブラック…

  • 1

    マライア・キャリー、激太り120キロでも気にしない!?

  • 2

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 3

    イルカの赤ちゃん、興奮した人間たちの自撮りでショック死

  • 4

    日本の先進国陥落は間近、人口減少を前に成功体験を…

  • 5

    北朝鮮、グアム攻撃計画8月中旬までに策定 島根・広…

  • 6

    自分に「三人称」で語りかけるだけ! 効果的な感情コ…

  • 7

    米朝舌戦の結末に対して、中国がカードを握ってしま…

  • 8

    軍入隊希望が殺到? 金正恩「核の脅し」の過剰演出…

  • 9

    「ゴースト」「ドイツの椅子」......ISISが好んだ7種…

  • 10

    対北朝鮮「戦争」までのタイムテーブル 時間ととも…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!