コラム

変調を迎えた日本経済...参院選に「減税政策への追い風」が及ぼす影響は

2025年07月08日(火)19時10分

昨年10月の衆院選から、自民党は世論を無視してきた

なお、日本の財政状況が厳しいので「減税は無責任」というのが、石破首相らの主張であるが詭弁に過ぎないだろう。先述のコラムでも紹介したが、日本の「構造的な財政赤字」は2024年時点で-2.5%(GDP比)まで改善している。

元来財政規律に厳しいドイツと同様に、日本の財政は既に健全化している。長年デフレが続いた日本では、徴税基盤が極めて強固であることを背景に、過去数年のインフレタックスが極端に強まり過ぎて財政収支が急速に改善してしまったのである。

これは、インフレ率に応じて基礎控除の金額を調整する当然の対応が未だに行われていない、事実上の増税が続いている当然の帰結でもある。

このため、数年にわたる税金の取り過ぎによって、政府部門の財政収支が先行して改善している。一方で、家計所得の回復が遅れて、2024年から個人消費にブレーキがかかっている。だから、税金の取り過ぎを恒久的に是正する対応が、日本経済を持続的に成長させる適切な対応になる。

実際に、2024年10月の衆議院選挙で躍進した国民民主党が、基礎控除引き上げによる所得税の大幅な引き下げ、そしてガソリン暫定税率の引き下げを目指した。ただ、自公に日本維新の会が協力したことで、これらの減税は実現しなかった。

石破政権は、その衆議院選挙で明らかになった世論を無視する対応を繰り返していることになる。今年6月の都議選に続いて、7月の参議院選挙で強い逆風に見舞われるのは避けられない、というだけに過ぎない。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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