コラム

トランプ政権の迷走で高まる「世界不況」リスク...日本が取るべき金融財政政策とは?

2025年04月29日(火)11時15分
ドナルド・トランプ米大統領

ドナルド・トランプ米大統領は一体何を考えているのか(4月28日、ホワイトハウス南庭) Aaron Schwartz/Sipa USA via Reuters Connect

<「ドル安政策」が実現するとの市場の思惑が根強い。極端な政策は修正されるかもしれないが、経済政策の根幹は変わらないだろう。日本はトランプ政権との交渉に振り回されている場合ではない>

4月2日にトランプ米政権が大幅な関税引き上げを打ち出してから、金融市場の動揺が続いている。米経済にも大きな足かせとなる関税率の大規模な引き上げが実現すれば、米国を中心に世界経済の成長にブレーキがかかる。

世界的な株価下落は当然の値動きだが、今後トランプ政権の関税政策が大きく修正されなければ、米国を含め世界経済は不況に至ると筆者は警戒している。

株価格下落に続き、4月17日からは為替市場でドル安が大きく進む場面があった。ドル安が進む中で、米国株そして米国債の価格も下がる、いわゆるトリプル安、米資産売りの値動きである。

関税政策だけでも米経済にはかなりの悪影響が及ぶが、かねてから批判していたパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長へのトランプ氏の「口撃」が強まったことが、ドル資産売りへの思惑を強めた恰好である。

パウエル議長に対する大統領の批判をどう考えればよいか。中央銀行は政策判断について独立性を有しているが、本来中央銀行は政府と協調すべきであり、政府が圧力をかけることは妥当な場合もある。

2012年までの日本では中央銀行が長年適切な政策を行わずにデフレを放置していたが、これを問題視し、日本銀行と2%インフレの共同目標を掲げてデフレを克服した安倍政権の対応は望ましい。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国の米国産大豆の購入は「予定通り」─米財務長官=

ワールド

ハセットNEC委員長、次期FRB議長の最有力候補に

ビジネス

中国アリババ、7─9月期は増収減益 配送サービス拡

ビジネス

米国株式市場・午前=エヌビディアが2カ月ぶり安値、
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story