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犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事件の現場から浮かび上がる「2つの条件」
本書では、広域強盗事件が発生した場所的要因を中心に論じた。例えば、冒頭で触れた強盗殺人事件の現場を検証すると、次のようになる。分析のツールは「犯罪機会論」だ。
性善説に近い立場から、人はなぜ犯罪をするのかを説明しようとするのが「犯罪原因論」であり、それに対し、性悪説に近い立場から、人はなぜ犯罪をしないのかを説明しようとするのが「犯罪機会論」である。
「犯罪機会論」では、動機があっても、犯行のコストやリスクが高く、犯行によるリターンが低ければ、犯罪は実行されないと考える。半世紀にわたる研究の結果、犯罪が起きやすい場所は、「入りやすい場所」と「見えにくい場所」であることが分かっている。
犯罪者は、この2つの条件が満たされた場所を慎重に選んでいるのだ。そこで、この防犯キーワードを用いて、強盗事件を検証してみよう。
現場となった住居は、建物の規模は大きいが、それほど華美な印象は受けない。しかし、ガレージには数台の車が停められている。ガレージと外部とを隔てているのはフェンス状の仕切りであり、停まっている車種や台数は一目瞭然である。そのため、経済的に余裕があることが外部から推測できる。
高級車を複数台所有しているような家庭では、視線を遮断できるシャッタータイプのガレージの方が望ましい。犯罪者の目を刺激し、犯罪の「機会」を感じさせないためにも、「金目のもの」は見せないことが賢明である。
特異なケースではあるが、住居の隣に設置されている自動販売機が気にかかる。自動販売機が存在するだけで、不特定多数の者が立ち止まっても不自然ではない場所となる。さらに、この自動販売機の横にはベンチやゴミ箱が設置されている。このような状況であれば、購入した飲料をベンチで飲みながら、住居の人の出入りや窓の数・位置といった建物の構造をじっくり観察することが可能である。
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