コラム

「しゃもじ」批判では分からない...岸田首相「電撃訪問」、ウクライナから見た「効果」

2023年04月01日(土)19時08分

230401kmr_ukw02.jpg

日本の車いすを受け取るイバンキフ村の人たち。その多くがチェルノブイリ原発事故の被曝者だ(3月15日、FFU提供)

「ウクライナでは戦前から車いすは不足していた」

第1便のうち100台が3月15日、キーウ近郊にあるイバンキフ村の利用者に無事届けられた。24日、日本郵船は第3便以降の無償支援継続を決定した。岸田首相のウクライナ訪問も日本郵船の背中を押したと筆者はみている。第2便のうち140台も28日に同国テルノピリ州保健局に届き、州内各病院の利用者に配られる。

日本からイバンキフ村に届けられた車いすの動画

FFUのオレナ・ニコラエンコさんは「ウクライナでは車いすは高価なものです。戦前から車いすは不足していました。車いすがないと外の空気を吸うこともままならない、そんな人たちがずっと部屋に閉じこもっているのはとてもつらいことです。ロシアのロケット攻撃により、車いすがないと動けない被災者が日に日に増えています」と言う。

イバンキフ村地域社会サービスセンター、ナタリア・ネステレンコ所長は 「人口 2万2000 人の半分は年金受給者。年金受給者の 3 人に 1 人が障害者だ。チェルノブイリ原発事故で被曝した人たちは筋骨格系の病気を患っている。さらに36日間ロシア軍の占領下に置かれ、体調を崩した人もいる」と話す。日本の車いすはそんな人たちの心に希望の火を灯す。

230401kmr_ukw03.jpg

雪の中、テルノピリ州保健局に届いた日本の車いす(3月28日、FFU提供)

日本では毎年約5万台の車いすが廃棄されていると言われる。あなたの善意でこうした車いすが蘇り、ウクライナの未来、引いては世界の未来に明かりを灯すことができる。下記の銀行口座で寄付を受け付けている。

みずほ銀行練馬富士見台支店 普通3050396 トクヒ)キボウノクルマイス

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ政権の性自認パスポート拒否、連邦控訴裁も認

ワールド

イラン、豪州との外交関係を格下げ 放火事件で対立

ワールド

韓国、日本車関税引き下げの影響を評価 米大統領令受

ワールド

OPEC産油量、8月はさらに増加=調査
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 6
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 7
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 9
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story