コラム

ハリーとメーガンの進撃止まらず...アメリカを舞台に集めた巨額のカネと「大戦果」

2023年01月31日(火)18時50分

虎視眈々と復権狙うアンドルー王子

カミラ夫人が陰で2人の悪口を流しているとか、戴冠式に招待しないなどというのは考えられない話だ。チャールズ国王はアンドルー王子の性的スキャンダルと、ハリーとメーガンという2つの大きな爆弾を抱えている。ウィリアム皇太子とハリーの兄弟喧嘩に自分とダイアナ元妃の争いをダブらせているのかもしれない。

ハリーとメーガンは旧態依然とした王室の伝統を受け入れることができなかっただけで、人の道を踏み外したわけではない。それに比べてアンドルー王子は救いがない。エリザベス女王という重しがなくなったとたん、17歳の時に性的関係を持つことを強要されたと訴えられていたバージニア・ジュフレ(旧姓ロバーツ)さんとの和解を覆そうと考え始めた。

アンドルー王子は米富豪ジェフリー・エプスタイン被告=自殺 =の性的虐待事件に関連してジュフレさんと性交したとして米法廷に訴えられ、970万ポンド(約15億6500万円)をジュフレさんの性的人身売買を追放する慈善活動に寄付することで法廷外和解した。公務を解かれたアンドルー王子は和解を覆すことで復権を企んでいる。

アンドルー王子は王室の「負の遺産」だ。チャールズ国王は年10億ポンド(約1600億円)にのぼる洋上風力発電所の君主領リースによる増収を「広い公共の利益」のために使うよう要請した。先代の女王が毎年夏、スコットランドのバルモラル城に滞在している間、一般公開されていたバッキンガム宮殿を1年中公開するなど、市民社会に溶け込む姿勢を示す。

チャールズ国王にはアンドルー王子を容赦なく切り捨てる一方で、王室の新たな形を示すためハリーとメーガンを受け入れる度量が求められている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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