コラム

欧州の炭素価格が80ユーロを突破、インフレ加速の懸念を抱えながらも動き出した大市場

2021年12月07日(火)17時04分

しかし環境保護団体WWFジャパンの小西雅子専門ディレクター(環境・エネルギー)はこう課題を指摘する。

「日本政府が資金と技術を提供するため途上国に喜ばれるが、二国間でいちいち契約しなければならないので手間も時間もかかる。本来、市場メカニズムは民間の参加を促して削減行動を拡大することが期待される仕組みだが、JCMは基本的に補助金の仕組みなので政府の補助以上のプロジェクトが実施されにくく市場の広がりが見通せない。JCMにより30 年度までに官民連携で排出削減量累計1億トン(事業規模最大1兆円)程度を目指しているが、規模が小さい」

1.5度目標を達成するためには今後10年の取り組みがカギを握る。脱石炭や電気自動車の取り組みで欧州に大きな差を付けられた日本は「50年カーボンニュートラル」に向けた明確な戦略を持たないと、炭素市場メカニズムでも欧米にとどまらず、中国にも主導権を取られる恐れがある。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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