コラム

高まる「トランプ的」ローマ教皇の待望論...改革派フランシスコ教皇への「反発のマグマ」が噴出か

2025年04月24日(木)11時31分
ローマ教皇フランシスコ教皇の死で保守派の反発が噴出

教皇フランシスコを追悼するメキシコの教会(メキシコシティ、4月23日) Henry Romero-Reuters

<自分で手荷物を持ち、トレイを運んだローマ教皇フランシスコが死去。新教皇選出選挙コンクラーベに向け、カトリック内部でくすぶっていた保守派の反発が噴出するか>

[ロンドン発]4月20日、バチカンのサンピエトロ広場で開かれた復活祭の行事で姿を見せたローマ教皇フランシスコが21日死去した。88歳だった。バチカンは葬儀と新教皇選出選挙「コンクラーベ」の準備を進めるが、反フランシスコ派のマグマがうごめいている。

フランシスコは在位中、伝統的なバチカンの慣行を大幅に変更し、進歩的な改革を実践した。『最後の晩餐:アート、信仰、性、そして1980年代の論争』(筆者仮訳)の著者ポール・エリー氏は米誌ニューヨーカーに「地に足の着いた教皇」(21日付)と題して寄稿している。

「独裁者やその予備軍が台頭する時代においてフランシスコは強権的な指導者とは真逆の存在だった。頻繁に、自然に、おおらかに笑った。直接的で非公式な交流を好んだ。自分の手荷物を持ち、カフェテリアで自分のトレイを運び、記者からの質問に即興で答えた」(エリー氏)

最後のメッセージは「他者への信頼を蘇らせたい」

「注意深く決意に満ち、気難しく気まぐれで、時に慎重、時には急ぐ捉えどころのない人物だった。その性格的特質は時が経つにつれ、変化するよりむしろ研ぎ澄まされていった。親しみやすさによってローマ・カトリックを市井に引き戻し、教皇職を現実に近づけた」(同)

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トルコ大統領、プーチン氏に限定停戦案示唆 エネ施設

ワールド

EU、来年7月から少額小包に関税3ユーロ賦課 中国

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、「引き締め的な政策」望む

ビジネス

利下げには追加データ待つべきだった、シカゴ連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story