コラム

米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?

2025年04月16日(水)19時32分

相互関税は極めて政治色の強いスローガン

各国の市場では株価が下落し、世界同時株安の様相も呈しているので、しばらくは混乱が予想される。中国やEU(欧州連合)はアメリカの方針に強く反発しており、日本国内でもアメリカに対して報復関税も含め強気の交渉を行うべきだとの声が聞かれる。

また相互関税の発動はアメリカ経済にもインフレなどの悪影響を与えるため、関税はすぐに撤回されるとの見立てもある。だが、今回の相互関税が極めて政治色の強いスローガンであるという現実を考えると、トランプ氏も簡単には引き下がらないだろう。


関税の発動によってアメリカの物価は確実に上昇することになるが、海外に移転していた生産の一部が国内に戻るので雇用は拡大する。アメリカ政府は関税によって巨額の税収を得られるので、しばらくの間は減税など景気刺激策を実施することで2026年に実施予定の中間選挙までは何とか景気を持たせることも不可能ではない。

加えて、トランプ政権が今後、矢継ぎ早に「外国に富を奪われていた労働者が仕事を取り戻した」という一大政治キャンペーンを展開するのはほぼ確実である。

最終的には物価高の影響が大きくなってくるため、いずれ反発の声も高まってくるだろうが、ある種の正論とも言えるトランプ政権のスローガンに対して、現時点では否定的な意見を述べられる雰囲気にないというのが実情だ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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