コラム

「ディオール疑惑」尹大統領夫人の聴取と、韓国検察の暗闘

2024年08月06日(火)08時00分

韓国の政権が検察に摘発されるメカニズム

このような事態は韓国において、実はそれほど珍しくない。韓国の検察は、今日まで時の政権の強い影響下に置かれていた。政治的人事も頻繁で、そこには検察を政治的に有利に使いたい歴代政権の意図が存在した。

しかし民主化以降、多くの政権で検察はその影響圏を脱し、政権に対する捜査を進めてきた。そのメカニズムは単純である。韓国の大統領に与えられた権力は絶大であり、だから周辺では頻繁に汚職などの犯罪が発生する。とはいえ政権の大きな権力は捜査を躊躇させるに十分であり、だから検察は当初は動かない。

だが、いったん支持率が低下し、政権の求心力が失われると、事態は一変する。検察は自らを守るためにも捜査を行わざるを得ず、またそれこそが次期政権に対する自らの存在感を示す手段になる。その過程で検察は分裂し、やがて大統領支持派が敗北する。結果、歴代政権では、その末期になると次々とスキャンダルが明らかになり、その支持率はますます低下してきた。

こうして見ると、大統領夫人の疑惑をめぐる検察の分裂と対立も、韓国における歴代政権末期のよくある状況の1つであることが分かる。最高検察庁とソウル地検は、大統領派と反大統領派に分かれて対立を続けていくのか。それとも両者が競争する形で、大統領とその周辺への捜査を行っていくのか。

明らかなのは、この政権が大きな岐路に差しかかっている、ということだ。

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プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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