コラム

「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分裂・大迷走した根本的理由

2025年05月12日(月)11時18分
韓国大統領選

5月8日に行われた韓悳洙(左)と金文洙(右)の候補者一本化協議。結局決裂した(ソウル) Kim Hong-JiーREUTERS

<弾劾されたユン前大統領の後任を選ぶ韓国大統領選が12日スタートした。6月3日まで22日間の選挙戦が行われるが、与党「国民の力」の候補者選びは文字通り二転三転した。結局、より保守色の強いキム・ムンス前雇用労働相に決まったが、保守内部の分裂でこのままでは大敗が避けられない>

6月3日に韓国で大統領選挙が行われる。イデオロギー的に保守派と進歩派に大きく両極化したこの国で、進歩派の最大野党「共に民主党」は前代表の李在明(イ・ジェミョン)を早々に候補者として選出した。同じく進歩派に属する中小政党との話し合いも進んでおり、進歩派の結集が進んでいる。

他方、保守派は混乱を極めている。与党「国民の力」は金文洙(キム・ムンス)前雇用労働相をいったん公認候補に選出した。しかしこれに先立ち、やはり保守派に分類される韓悳洙(ハン・ドクス)前首相が立候補を表明しており、与党指導部は候補者調整に乗り出した。世論調査では大統領代行として融和に努めた韓悳洙が優勢で、5月10日未明、与党は議員総会を開いて再度予備選挙を行い、韓悳洙を候補者に選出した。

とはいえ、話はここで終わらなかった。議員総会の結果は、即日、党員投票にかけられたが、この結果が僅差で否定されたからである。こうして金文洙が再度候補者に返り咲き、差し替えを図った党指導部は完全に面目を失った。保守派ではかつて「国民の力」党首を務めた経歴のある、野党「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)も候補者登録を終えた状態にあり、分裂選挙の様相を呈している。
 
保守・進歩両勢力が拮抗する韓国で、大統領選挙の帰趨を決める要因は各陣営がどの程度まで結集して特定の候補を支援できるか、そしてその結集を前提として中道・無党派の支持を獲得できるかになっている。その意味において、保守勢力の分裂は選挙戦で決定的な意味を持つ。候補者選出をめぐる混乱は中道・無党派層の支持を失わせるのみならず、保守派内部においても党への忌避感情をもたらすからだ。
 
与党指導部はなぜ、このように基本的な失態を演じたのか。その原因は大きく2つある。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米軍がホルムズ海峡封鎖へ、イランは交渉に戻る見通し

ワールド

ロシア・ウクライナ復活祭停戦、発効数時間で双方が違

ワールド

米イラン協議決裂、核・ホルムズ海峡で溝埋まらず 停

ワールド

中国、台湾向け観光規制緩和など新措置 野党党首訪中
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 2
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 3
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけない副作用に研究者が警鐘
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story