コラム

韓国大統領選の詳細分析:李在明は本当に「圧勝」だったのか?

2025年06月21日(土)18時00分
李在明

「ジェンダー対立」に李在明はどう立ち向かうのか LEE YOUNG HOーPOOLーSIPA USAーREUTERS

<韓国大統領選で、韓国メディアは予想と異なり李在明の当選確実をなかなか打てなかった。票が予想以上に伸びなかったからだが、その得票を細かく読み解くと、「圧勝」とされた李在明新政権の脆弱さが浮かび上がる>

6月3日に韓国で大統領選挙が行われ、「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)が勝利した。事前の世論調査で彼は対抗馬であった「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)や改革新党の李俊錫(イ・ジュンソク)に10ポイント前後の差をつけてリードしていたから、勝利そのものは予測どおりだった。韓国メディアも、開票開始直後から出口調査の結果を利用して、李勝利の可能性が極めて強いと報じ、当選を前提として開票速報番組を構成した。

しかし、予想とは異なり各局は李の当選確実をなかなか打てなかった。理由はもちろん、票が予想以上に伸びなかったからである。出口調査では12.4ポイントの大差があった李と金の間の最終的な得票差は8.3ポイント差にとどまった。


衝撃的だったのは李在明の得票率が49.4%だったことである。まず、この数字は保守側の金文洙と李俊鍚の得票率の合計を0.07ポイント下回っていた。つまり、仮に保守陣営が候補者統一に成功し、うまく選挙戦を運んでいたら、李在明に勝利した可能性があった。

しかしよりインパクトがあったのは、李在明の得票率が約1年前の2024年4月に行われた国会議員選挙で、共に民主党が獲得した小選挙区の得票率50.4%を下回ったことである。つまり、李在明と共に民主党は、この間に尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による戒厳令宣布と彼の弾劾罷免という保守陣営側の大きな失策があったにもかかわらず、自らの支持をむしろ落としたことになる。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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