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アングル:米でウクライナ巡る風向き変化、対ロ制裁強化にトランプ氏の後押し期待

2025年07月14日(月)11時06分

 トランプ米大統領は14日にロシアを巡り「重大な声明」を出す。写真はウクライナとロシアの国旗と、トランプ氏のイメージ。1月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)

Gram Slattery

[ワシントン 12日 ロイター] - トランプ米大統領は14日にロシアを巡り「重大な声明」を出す。議会には、ウクライナ侵攻を続けるロシアおよびロシア産原油輸入国に対する制裁強化法案が提出されており、ウクライナ支持派議員は法案へのトランプ氏の後押しを期待している。

制裁強化法案は、上院のグラム議員(共和党)とブルーメンソール議員(民主党)が提出した。ウクライナ支持派は法案が実現すればロシアへの包囲網が狭まり、ウクライナとの和平交渉を誠実に進めるように迫ることができると見込む。

重大声明がどのような内容なのか、トランプ氏は明らかにしていない。トランプ氏は昨年11月の大統領選の選挙期間中にウクライナ侵攻を即終わらせると豪語し、ロシア寄りの姿勢を示していた。しかし風向きが変わりつつある。この数週間は停戦を受け入れようとしないロシアのプーチン大統領と、ロシアの攻撃によるウクライナでの民間人死者数増加に不満を募らせる発言を繰り返し、ウクライナに対して防衛兵器を追加供与することを承認した。

上院共和党のスーン院内総務は記者団に対し、上院が今月中に法案を採決する可能性があると言及。ジョンソン下院議長(共和党)も楽観論を表明しており、情報筋によるとグラハム氏とルビオ国務長官は欧州の外交官らに対して法案が間もなく動き出すと内々に伝えている。

グラム氏は8日にX(旧ツイッター)へ「上院はまもなく厳しい制裁法案で動き出す。これは対ロシアだけでなく、プーチン氏の兵器の資金源となるロシアのエネルギー製品を購入している中国やインドのような国々も対象となる」と書き込んだ。

ルビオ氏は11日にロシアのラブロフ外相とクアラルンプールで会談後に記者団に対し、ウクライナでの戦闘を巡ってロシアと「新しく別のアプローチ」を含むいくつかのアイデアを共有したとし、持ち帰ってトランプ氏とさらに協議することになると表明した。

ルビオ氏は「新しいアプローチは自動的に和平につながるものではないが、道を開く可能性がある」と指摘。一方でロシアが和平案に対して柔軟に対応しないことにトランプ氏が不満を抱いていると改めて表明し、制裁強化法案が議会を通過する可能性があることを数週間前に伝えたと明らかにした。

<作業ペースが加速>

制裁強化法案は、ロシアのさまざまな個人、政府機関、金融機関に対して広範な制裁を課す内容。ロシアと貿易をしている国々も制裁対象とし、ロシア産の石油、ガス、ウランなどを購入している国々に500%の関税を適用する。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、同盟関係にある西側諸国に対して対ロ制裁をより厳格化するように繰り返し求めている。

2人の米政府当局者によると、法案を巡る作業のペースが先週加速した。

トランプ氏の考え方に詳しい人物は、法案にはさらなる取り組みが必要だと指摘。現行版では、大統領が議会から独立して外交政策を遂行するのに十分な柔軟性が与えられていないとし、ホワイトハウスは法案が「大統領の外交政策目標を強化する」ものになるように議会と協力していると説明した。

情報筋によると、議会スタッフはここ数日間にわたり、制裁がモスクワにある駐ロシア米大使館の業務に影響を与えないようにする方法などを調整している。

グラハム氏の広報担当者はロイターに対し、他の立法優先事項があるため、法案の審議は早くても今月20日に始まる週以降になるとの見通しを示した。

下院はその2週間後に8月の休会に入るため、議場で審議できる時間は限られている。法案の支持者の一部は、トランプ氏は制裁に拒否権を行使する広範な権限を持っており、ホワイトハウスが制裁を発動することも可能なため法案は象徴的なものに過ぎないと認めている。

ある共和党の上院スタッフは「大統領は既にこれら全ての権限を持っている」と語った。 

ロイター
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