ロシアが負ければ、プーチンの自国至上主義は「歴史のごみ箱行き」になる
国連はロシアのウクライナ侵攻を繰り返し非難しているが(今年3月、ニューヨーク) BRENDAN MCDERMID-REUTERS
<ロシアとウクライナ、勝つのはどちらか? 戦争が終わったとき、どんな新国際秩序が生まれるのか。2つの「戦後」シナリオを検証する>
ウクライナの高機動ロケット砲システムとロシアの旧ソ連製戦車が、そしてウクライナの東部と南部で殺し合っている数十万人のウクライナ兵とロシア兵が、ウクライナの運命を決めようとしている。
現時点ではウクライナが主導権を握り、数千平方キロの領土をロシアの侵略者から解放しつつある。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の思惑とは反対に、ウクライナが独立国家として生き残り、西側の経済・政治機構に完全に統合されることは、ほぼ確実のようだ。
戦争がどのような形で終わったとしても、ロシアが世界の経済大国から敬遠され続けることは間違いないだろう。ウクライナの荒廃した領土、衰えたロシア政権、萎縮するロシア社会と経済。それがロシアの侵略の果実となる。
ただし、ロシアがいつ、どのように国際社会に復帰するのか、そもそも復帰するかどうかは、ロシア政権の今後の在り方によって、さらにはウクライナと、主にアメリカが、どのような平和を受け入れるかによって決まる。
戦争終結後は2つのシナリオが考えられる。
1つは、過去80年間、規範となってきた国際秩序が強化され、ロシア政権の帝国的かつ直情的な反欧米の性質が根本的に変わること。
もう1つは、世界が純粋に国力に基づいて2つの勢力圏に分断され、対立することだ。その場合、世界の政治的統合と経済成長は著しく遅れるだろう。
プーチンは独立した国と文化としてのウクライナを消し去るため、そしてロシアの政治、経済、文化の支配から飛び出して西に接近することを阻止するために侵攻した。しかし、より大きな戦略的目標は、第2次大戦後の規範的な国際秩序を覆すことだ。
プーチンから見れば、その秩序は覇権帝国アメリカの二枚舌であり、彼らはそれを道具にロシアの文化や権力、さらにはプーチン自身を滅ぼそうとしている。
プーチンのこうした世界観は、特異なものではない。北はヘルシンキから西のベルリン、中欧のキーウ(キエフ)、南の(アルメニアの首都)エレバンなどロシア人以外の人々は、東から襲いかかるロシアの大熊を必死にかわしながら、自分たちを見下す退廃した西側に憤慨してきた数百年の歴史を抱えている。
ロシアの自国至上主義に限界
ウクライナがロシア軍のキーウ占領の試みを退けると、ジョー・バイデン米大統領は長期的な対ロシア政策について、新しい時代を開く決断を下したようだ。
すなわち、アメリカはウクライナ戦争を利用して、ロシアが他国を侵略したり、規範的な国際秩序を崩壊させたりする能力を破壊することを目指していく。
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