コラム

「ツイッター終了」の未来

2022年11月30日(水)10時34分

Twitterがなくなったとき、このような機能を代替可能なメディアは現在のところ見当たらない。Twitterの消滅は単に一つのメディアが失われるだけではなく、日本社会における情報発信の文化全般に影響することになるだろう。

Twitterが喚起してきたコンテンツの同時的受容の文化

日本のメディアの中でも、Twitterの恩恵を強く受けてきたのが日本のテレビ局だろう。昔のように庶民の娯楽といえばテレビという時代は終わって久しいが、Twitterはそのテレビ文化の延命に寄与してきたのではないかと思っている。コンテンツの同時的受容への欲望を喚起することによって。

20世紀前半のドイツで活躍した思想家ヴァルター・ベンヤミンが言う通り、大衆文化の王様として登場した映画は集団で鑑賞するメディアだった。しかし20世紀半ば以降、映画館の繁栄はテレビにとって変わられ、そのテレビは一家に一台から個人に一台所有するものへと変わっていった。また録画機器の発達、そしてネットでの配信が始まったことにより、メディア技術の歴史は決まった時間に決まったものをみんなで見るものから、一人で好きな時間に好きなものを好きな分量だけ見る、という方向に発展してきたといえる。

それにも拘らずTwitterを見ると、皆で決まった時間に決まったものを見る、ということを、多くの人々が欲していることに驚く。スポーツの生中継ならばそれも理解できる。しかし、見ようと思えば配信やレンタル、また自身で録画するなどその時間に見る必要がない映画やドラマ、アニメのテレビ放送を、わざわざリアルタイムで視聴して「実況」している人も多い。

たとえばジブリ映画の『天空の城ラピュタ』だ。この映画は毎年放映されているのだから、本当に見たければ録画して見れば済む。むしろ若干席を外したときのための一時停止機能やCMカット機能によって、その方が快適な視聴を楽しむことができる。しかし周知のように、この映画はテレビで放映されるたびに、多くの視聴者によってTwitterでの「実況」が行われている。有名な「バルス」のセリフがあるシーンでは、視聴者たちが一斉にそれを書き込むことでTwitterをサーバーダウンさせたこともある。

なぜこのような現象が起きるのか。それは、人々がコンテンツを鑑賞する動機は、必ずしもコンテンツの内容それ自体にはなく、そのコンテンツを「皆で一緒に」鑑賞することにある場合もあるからだ。映画であれば、他の媒体で視聴可能な有名映画であればあるほど、「実況」が盛り上がると想定されるので、自分もそれに参加しようとする。。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ドバイの米オラクル施設に迎撃破片が落下、負傷者なし

ワールド

トランプ政権による大学への人種データ開示命令を仮差

ビジネス

アングル:トランプ関税で変わる米国のメニュー、国産

ワールド

米戦闘機2機、イランが撃墜 乗員2人救助・1人不明
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 9
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 10
    60年前に根絶した「肉食バエ」が再びアメリカに迫る.…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 10
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story