コラム

「カルタヘナ法」違反で初逮捕 遺伝子改変メダカとメダカブームの道のり

2023年03月14日(火)12時30分

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イソギンチャクモドキに由来する遺伝子が導入されたミナミメダカ 環境省

しかし、淡水魚飼育室に出入りすることが可能だった同大生命理工学部の元学生の男(35)が、在学時の09年10月から11月までの間に該当の遺伝子改変メダカの卵を無断で持ち出し、飼育。逮捕された5人らに譲渡するなどして流出しました。警視庁は、元学生の男ら男女4人もカルタヘナ法違反容疑で書類送検し、自宅の水槽などから計約1400匹のメダカを押収したといいます。

違法飼育、販売の発覚は、逮捕された男の1人が昨年3月、台東区の展示会で問題の遺伝子改変メダカを1匹10万円で販売しているのを客が見つけて、警視庁に通報したことが発端です。東京工業大は今年1月より、警視庁から元学生の供述や捜査状況の情報提供を受け、内部調査を進めていました。

文部科学省は3月3日、東京工業大から遺伝子改変メダカの学外持出に関する調査結果と再発防止策についての報告書の提出を受け、文書で厳重注意を行いました。

メダカが「研究に適した魚」である理由

メダカは、目が大きく頭部から飛び出しことから、「目高」が名の由来になっていると考えられています。

昔から日本に生息し、黄褐色の野生メダカや、突然変異で体色が変化したヒメダカ、シロメダカなどが知られていました。日本の文献に登場するのは18世紀で、江戸中期の浮世絵師の鈴木春信は「めだか掬い」(1767年頃)で、小川の水面を網ですくっている二人の少女を描いています。

1823年にドイツの博物学者シーボルトは、ニホンメダカを西欧に初めて紹介します。1846年には、オランダのライデン王立自然史博物館館長のC. J. テミンクと助手のH. シュレーゲルによって、ニホンメダカは生物学的に記載されました。

以来、メダカは、観賞魚としてよりも研究に適した魚として、国内だけでなく海外でも利用されてきました。①日本全国に分布しており、(かつては)入手が容易だった、②卵と胚が透明で発生の観察に適している、③様々な温度(4~30℃)に対応し、淡水魚だが慣らすと海水でも飼育できる、④飼育費用が安く1年中繁殖が可能なため、遺伝学的な研究に適している、などの利点があったからです。

田んぼや小川、池にすむメダカは、蚊の幼虫のボウフラを食べるため、益魚としても知られています。動揺『めだかの学校』が1951年にNHKラジオ番組で発表されたり、小学校で飼育されたりするなど、かつては身近でどこにでもいる魚でした。しかし、80年代頃から、農薬や生活排水などによる水環境の悪化、宅地造成や護岸工事による生息地の減少、外来種の影響で数が激減しました。

99年2月に環境庁(当時)が発表したレッドリストに「絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)」と記載され、03年5月に環境省が発表したレッドデータブックに「絶滅危惧種」として指定されると、大きなニュースになり、全国で保護活動が行われるようになりました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専攻卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)、獣医師。朝日新聞記者、国際馬術連盟登録獣医師などを経て、現在、立命館大学教員。サイエンス・ライティング講座などを受け持つ。文部科学省COI構造化チーム若手・共創支援グループリーダー。第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。デビュー作『馬疫』(光文社)を2021年2月に上梓。

TikTok

「中で何かが動いてる」と母 耳の穴からまさかの生き物が這い出てくる瞬間

2023年6月5日(月)18時20分
若道いつき
耳の穴

(写真はイメージです) oliviaelisa92-iStock

<コメント欄にも恐怖症のユーザー多数>

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TikTok

【動画】「中で何かが動いてる」と訴える女性の耳からクモが這い出てくる瞬間

2023年6月5日(月)16時15分
「中で何かが動いてる」と訴える女性

@munimarin/TikTok

<本来そんな場所にいるはずのないクモが女性の耳から這い出てくるという映像が、TikTokユーザーたちを戦慄させている>

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無差別殺傷事件は6月に多発... 日本がいまだ「自爆テロ型犯罪」に対して脆弱な理由

2023年6月2日(金)18時50分
秋葉原無差別殺傷事件の現場

秋葉原無差別殺傷事件発生直後の現場(2008年6月8日) Issei Kato-REUTERS

<性格も境遇もバラバラな犯人の動機についてばかり考えるのではなく、「なぜここで」という視点から犯行機会を減らそうとすることが重要だ>

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テクノロジー

ChatGPTなどの生成AIブームと米大統領選 ディープフェイクにどう対処すべきか

2023年6月2日(金)10時25分
俳優の顔にワイヤーフレームがかけられた画像

2024年米大統領選挙戦へようこそ。ここでは「現実」をでっちあげ放題だ。写真はディープフェイク動画作成のため、俳優の顔にワイヤーフレームがかけられた様子。ロンドンで2019年2月撮影(2023年 ロイター)

「私、実はロン・デサンティス氏が大好きで」。あろうことか、共和党の大統領指名獲得争いに出馬したフロリダ州知事を支持していると暴露する民主党のヒラリー・クリントン元米国務長官。「この国が必要としているのは正に彼のような人。本気でそう思います」──。

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野生動物

シロクマ...? 中国・四川省の保護区に「全身真っ白」のパンダ

2023年6月1日(木)19時45分
若道いつき
アルビノのジャイアントパンダ

CGTN-YouTube

<地球上で唯一とみられるアルビノのジャイアントパンダに世界が夢中>

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