コラム

AI自体を製品にするな=サム・アルトマン氏からスタートアップへのアドバイス

2024年05月29日(水)13時50分
サム・アルトマン氏 REUTERS/Denis Balibouse

サム・アルトマン氏 REUTERS/Denis Balibouse

<「GPT-5が多くのAIアプリを一掃する」とサム・アルトマン氏が警告>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

Microsoft Build 2024に登壇したOpenAIのサム・アルトマン氏が、スタートアップへのアドバイスを求められ、「AIだけで製品や企業を作るな」と答えています。他の最近のインタビューでも同氏は、「今のAIの水準をベースに製品を作るな。AIは進化し続けるのだから」「AI自体を製品にするな。AIの周辺に製品やサービスを作れ」「AIのぐるぐるモデルを組み込むことを忘れるな」といったようなアドバイスをしきりにするようになっています。

AIを搭載したアプリやサービスが無数に登場していますが、同氏は「GPT-5がローラーで(そうしたアプリやサービスを)踏み潰すことになる。スタートアップが憎いからじゃない。われわれには技術を進化させるというミッションがあるからだ」と語っています。目の前に迫ったGPT-5の登場で、多くの起業家が失敗するのを見たくないので、こうしたアドバイスをしきりにするようになったのかもしれません。

下の動画のタイムスタンプは、該当箇所のタイムスタンプです。ただわかりやすさを重視し、かなり意訳しています。正確な発言を引用したい場合は、ぜひ動画でご確認ください。

【動画】AI自体を製品にするな=サム・アルトマン氏からスタートアップへのアドバイス

(2:42:11)
今後2、3年でどんなことが起こると思うのか?

単純だけど実は意味深なことは、モデルがどんどん賢くなっていくこと。基礎的な能力も向上しているし、新しい能力も身につけてきている。反応速度は向上する一方で、コストも低下していっている。

新しい事業を始めるのに最適の時期だと思う。事業チャンスという意味ではインターネット以来かもしれないし、それ以上かも知れない。本当のプラットフォームシフトのときだ。今後2、3年で、いろいろなことが起こるだろう。

モバイル時代の初期、2008年ごろに自分たちをモバイルの会社だと定義する人が多かった。でも数年後には、だれもモバイルの会社を名乗らなくなった。モバイルに対応するのが当たり前になったからだ。

AI時代も同様。AIは素晴らしい技術だが、AIだけですばらしい製品や企業を作れるわけではない。今まで通りのビジネスのやり方に加えて、どのように長期的価値を創造し続けることができるのかを考えなければならないし、そのためにハードワークが必要になる。AIゴールドラッシュの興奮の中で、このことを忘れがちだと思うのです。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ジャクソン米最高裁判事、トランプ大統領の裁判官攻撃

ワールド

IMF、中東・北アフリカの2025年成長率予測を大

ワールド

トランプ政権の「敵性外国人法」適用は違法 連邦地裁

ビジネス

伊藤忠商事、今期2.2%増益見込む 市場予想と同水
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story