コラム

高級ブランドばかりかウォルマートまでがNFT事業に乗り出す理由

2022年02月16日(水)18時33分

実物店舗からメタバースにシフトするGap Eduardo Munoz-REUTERS

<テレビを見なくなった世代にリーチするには、ゲーム内などのメタバース内で広告マーケティングをすることが有効だ>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

米大手スーパーのWalmartが、暗号通貨やNFT(非代替性トークン/デジタル証明書)事業に乗り出すことが明らかになった。米特許庁に提出した書類によると、メタバース上で仮想の電化製品や家具、おもちゃ、スポーツ用品などを販売する計画という。同社以外にも、NikeやGap、またGucciやLouis Vuittonといった高級ブランドまでがNFT事業に乗り出した。高級ブランドやスーパーがなぜNFT事業を手掛けるのだろうか。

NFTは、暗号通貨などに使われているブロックチェーンと呼ばれる基礎技術を応用したもので、共有の台帳に書き込まれた所有者や売買記録などのデータの改ざんがほぼ不可能であるため、アートなどの所有者を証明するツールとして使われ始めている。最近では、絵画、音楽などのアート作品だけでなくメタバース(仮想空間)上のアバターの洋服などもNFTとして売買されるようになっている。

Gapは、同社のロゴつきの仮想パーカーのコレクションをNFTとして発売した。レア度によって値段は異なり、安いもので約1000円、よりレアなものは約5万円。最もレアなパーカーはオークションにかけられるという。


実態のないNFTを買う理由

Uder ArmourやAdidasといったブランドも同様に、昨年末にNFTを販売し、完売している。

Nikeはオンライン空間のNikelandで、靴や洋服を販売する計画で、仮想スニーカーメーカーのRTFKT社を買収している。

またGucciやLouis Vuittonなどといった高級ブランドもNFT事業に乗り出す準備をしているという。

なぜ実態のないものに若者はお金を払うのか。経験のない人には理解しづらいかもしれない。ファッションは、他人との人間関係の中での自己表現のツール。メタバースの中に、人間関係が存在するのであれば、友人にかっこよく思われたいという気持ちが生じるのは自然だし、そのためにお金を支払うのも自然なことと言える。

ではなぜブランドがメタバース上で仮想商品を販売しようとするのだろう。

その理由は3つ考えられる。1つは、若い世代へのブランディングだ。テレビを見なくなった世代にリーチするには、ゲーム内などのメタバース内で広告マーケティングをすることが有効。メタバース内のアバターがNikeの仮想スニーカーを履いていたり、Gucciのロゴのついた仮想バッグを持っていれば、効果的なブランディングになるわけだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story