コラム

次世代の最重要課題=「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」

2020年11月26日(木)20時47分

「すべての企業はテクノロジー企業になる」 putilich-iStock.

<破壊的技術の融合による社会変化に備える>

エクサウィザーズ AI新聞(2020年11月25日付)から転載

技術革新が加速度を増し、10年後には今とまったく異なる世の中になる。ここ1年間に米国で発売されたビジネス書の中に、こういう主張を掲げるものが増えてきている。これらの本の著者によると、AIを始め、VR、ブロックチェーン、バイオ、新素材、ロボット、センサーなどの技術が融合することで、技術革新が指数関数的に加速。劇的な社会変化の波が何度も何度も押し寄せてくるようになるという。ビジネス環境の激変が続く中、経営者にとって最大の仕事は、どんな波が来ても乗りこなせるような企業体質に会社を進化させること。デジタル・トランスフォーメーション(DX)こそが、経営者にとって最大の仕事になるという。

THE FUTURE IS FASTER THAN YOU THINKの著者Peter H. Diamondis氏によると、重要なのは「指数関数的」というキーワードだという。指数関数は、初期の変化は比較的なだらかだが、一定のポイントに達すると一気に大きく変化する。

実はデジタル技術は指数関数的に進化している。基礎となっている半導体が18ヶ月ごとに性能が倍に伸びているからだ。そこにAIなどの技術が加わることで、指数関数の伸びは減速しそうもない。そしていよいよ急角度で進化するフェーズに入ってきたというわけだ。

例えばAI新聞でも取り上げた空飛ぶ自動車の話も、AIやセンサー、新素材、3Dプリンターなどの技術が融合することで、ここにきて実現のめどが立ったわけだ。SFのような話が10年以内に現実になろうとしているのだ。

またアンチエイジング研究の最新動向を見てみても、10年後には平均寿命が劇的に伸びる可能性があることが分かる。

交通手段が変われば街の形が変わるし、寿命が劇的に伸びれば人々のライフスタイルが変わる。こうした技術革新は、氷山の一角に過ぎない。びっくりするような技術革新が同時多発的にあちらこちらの領域で起ころうとしているのだ。

こうした劇的な変化に、企業はどう備えるべきだろうか。

The innovation ultimatumの著者Seve Brown氏は、「すべての企業はテクノロジー企業になる。テクノロジー企業に進化できない企業は生き残れない」と指摘する。

では経営者は技術の専門家でなければならないのだろうか。

そんなことはないと思う。あまりに多くの技術が関与してくるので、すべての技術の専門家になるのは無理。また1つの技術だけの専門になれば、他の技術の動向を軽視するようになり、かえって時代の波に乗れなくなる可能性がある。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story