コラム

次期ダライ・ラマに高まる関心 「15世」候補者は世界で探せ

2017年09月16日(土)12時30分

第3の候補地は、チベット仏教文化圏の重要地であるロシア連邦のブリャート共和国だ。19世紀末、チベットをめぐって列強がグレート・ゲームを展開したときのこと。イギリスがチベットに進出を図った際、これを阻止しようとしたロシアの切り札はブリャート人の高僧ドルジエフだった。チベットに派遣されロシアへの接近を進言するドルジエフの影響力に、イギリスは大いに悩まされたほどだ。

だが今のロシアを治めるのは対アメリカで中国と共闘するプーチン大統領。ダライ・ラマの転生で、ブリャート共和国がチベット仏教世界の一部として政治力を増大することをプーチンは喜ばないだろう。

【参考記事】難民社会の成功モデル? チベット亡命政府トップ単独インタビュー

目下、ダラムサラも中国も秘密の選定チームをつくって、賢そうな幼子たちをリストアップして、いつでも15世と宣言できるようにしているようだ。宗教的権威はダラムサラにあるが、チベット仏教第2の高僧パンチェン・ラマ11世の前例もある。95年にダライ・ラマはチベットの少年を11世に認定したが、中国は少年と両親を拉致。同年に別の少年を11世として擁立、今日に至る。

今のパンチェン・ラマをチベット人は偽物と批判しながらも黙認しているのは、権威もカリスマもダライ・ラマに遠く及ばないからだ。もし中国がダライ・ラマの偽物をつくったら、仏教を愛する温和なチベット人も闘争に立ち上がるだろう。今までは焼身自殺で抵抗を示してきたが、大規模な紛争に発展する可能性も否定できない。

ノーベル平和賞受賞者ダライ・ラマを敵視する中国の存在こそが平和を脅かしている。

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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