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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オーストラリアのコロナ対策 Part 2

(Yakobchuk-iStock)

オーストラリアのコロナ感染者数は約27,000人で死者数が872人となっています(2020927日現在)。オーストラリアのコロナ感染者の増加は主にビクトリア州でのアウトブレークが原因です。


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(DavidHewison-iStock)


ビクトリア州のアウトブレイク

オーストラリアでのコロナ件数は6月の始めには落ち着いてきました。しかし、6月下旬からメルボルンのあるビクトリア州で、コロナの件数が徐々に増えていきました。そしてビクトリア州政府は630にはメルボルンの10の地域の規制を再び発表し、その後、徐々にビクトリア州全域でのロックダウンになっていきました。 またシドニーのあるニューサウスウェールズ州とビクトリア州の州境も閉じられ、ビクトリア州では外出する際はマスクの着用が義務付けされました。中でもメルボルンでは、8月上旬からさらに厳しいステージ4のロックダウンとなり、8以降の外出が禁じられ、その外出の理由は仕事、医療機関の受診か誰かの看病のためだけとされました。運動も自宅から5キロ以内の場所で、一時間ごととされました。 ビクトリア州政府は9月下旬にロックダウン解除のロードマップを発表し、ビクトリア州のロックダウンは徐々に解除されてきています。一番多いときで、一日700人以上の感染者数がでていましたが、現在では一日14人程度までに減っています。


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(Adam Calaitzis-iStock)


アウトブレークの原因

7月のビクトリア州のアウトブレイク以前、オーストラリアのほとんどのコロナ感染者のケースは海外からの帰国者の感染でした。しかし、ビクトリア州での感染は市中感染が主な原因でした。市中感染の原因はホテル検疫の失敗によるものだといわれています。ホテルで検疫中であるはずの人が普通に近所を歩いてたことがわかり、このホテル検疫の失敗はビクトリア政府がプライベートのセキュリティガードをホテルの検疫に雇ったのが原因でないかとされています。セキュリティガードは下請けに回され、感染対策のトレーニングをされていないスタッフ、防護服の不足などが感染が広がった原因のようです。またセキュリティガードが一つのホテル以外で勤務していたのも感染が拡大した理由のようです。 現在政府の特別審査会が原因と責任の追及を行っています。メルボルンで始まった市中感染は感染の拡大にコンタクトトレーシングが追い付いてない点も問題でした。他の州の医療関係者などにもコンタクトトレーシング援助の募集がされました。現在審査されている感染が広まった他の原因としては、病院で勤務していた医療感染者に十分な防護服が提供されていなかったこともわかってきました。 コロナ感染死者数は、ビクトリア州が大半です。亡くなった方の多くは老人ホームにいる入居者で、勤務するスタッフがいくつかの老人ホームを掛け持ちで勤務していたことが感染を拡大させた理由とされています。


クイーンズランド州でもメルボルンからシドニーを経由してブリスベンに戻ってきた若い女性二人が、州の審査に嘘の申告をして、感染が広がりました。後に、この二人はメルボルンなどで、いくつかの高級店から窃盗を行ったグループの一味ということもわかり、テレビやネット上に二人の個人情報が載るほどの騒ぎとなりました。

今後の課題

オーストラリアはホテル検疫、ソーシャルディスタンスなどの公衆衛生上定められた法律を破った場合、罰金または刑務所送りという罰があります。しかし、それらのほんの少しの綻びにより感染が拡大してしまいます。過去の失敗から、ホテルの警備をオーストラリアの軍隊によって管理する、医療関係の防護服の基準を上げるなどは改善はされてきています。他の国と同じように、今後の課題としては、コロナ感染の拡大を抑えつつ、いかに経済を回復させていくかということです。オーストラリアはアメリカなどと比べるとコロナ感染者数が低いので、完全に市中感染をゼロにするEliminationを目指すことも可能です。ニュージーランドは一時、完全なEliminationに成功しましたが、再び市中感染がおこりました。一方、感染が拡大しないように件数を低めに抑える方法がSuppressionであり、この場合Eliminationほど検疫などを厳しくする必要はありません。Suppressionを目指しているのかEliminationを目指しているのか、はっきりしていないのは問題のひとつで、これは医療関係者の間でもどちらを目指すべきかで意見が分かれます。これからオーストラリア政府の政策がどのように変化していくか注目です。



参考

https://www.worldometers.info/coronavirus/
https://www.vic.gov.au/coronavirus-covid-19-restrictions-victoria

https://www.health.gov.au/news/health-alerts/novel-coronavirus-2019-ncov-health-alert/coronavirus-covid-19-current-situation-and-case-numbers#cases-and-deaths-by-age-and-sex
https://theconversation.com/ppe-unmasked-why-health-care-workers-in-australia-are-inadequately-protected-against-coronavirus-143751
https://www.canberratimes.com.au/story/6841324/timeline-of-vic-hotel-quarantine-program/
https://www.abc.net.au/news/2020-07-30/coronavirus-queensland-three-women-ongoing-investigation/12503248

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

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