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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

コロナでまさかの大ヒット クリスマス煙出し人形「ウィルス学者」が話題に

「今年は商品販路が閉ざされてしまいました。クリスマスマーケットの中止で販売も難しくなり、ザイフェンを訪問し、工房で購入する客もいない。特にクリスマスグッズは季節品。手間暇かけて制作しても注目を集めるのは冬場だけ。大きな痛手です」

「従業員を雇う身として、2020/21年の活路を見出さねばなりません。伝統的な商品を守り続けることも大切。一方で、時流に乗ったトレンド商品開発も必要です」

「今年を振り返り、頻繁に登場した言葉はコロナウィルス。そこでウィルス学者をモチーフにした煙出し人形を作ってみようと思いました」

こうして伝統工法を駆使したトレンド商品「ウィルス学者煙出し人形」が誕生した。逆転の発想を活かしたこの作品は、まさに必要から生まれたアイデアと言っていいだろう。

「11月初旬から電話は鳴りっぱなしで、家族一同で注文対応に追われました。落ち着いて制作に没頭できなくなり、急遽オンライン注文サイトを開設。それでも注文が殺到し、サーバーがダウンした」と、うれしい悲鳴を上げるギュンター氏だ。

なんと1日の注文は1000件に上り、12月上旬までの注文は4000件だという。

ウィルス学者ドロステン教授に似ていますね?という問いに、「全くの偶然です(笑)。それにしても伝統工芸を手がけてきた中で、まさかウィルスを作るとは思いもしなかった」(ギュンター氏)

■クリスマスグッズのパイオニア

 

東部ザクセン州エルツ山地は、木製のクリスマスグッズや玩具制作の故郷。チェコとの国境に近いこの一帯は、国内で最も有名なクリスマスグッズ(ピラミッドやオーナメント、くるみ割り人形など)を制作する伝統産業地区だ。玩具やクリスマスグッズの制作、販売、営業に携わる人は2000人に上る。

同地区に点在する工房はそのほとんどが家族経営。商売がたきではなく仲間としての繋がりも深く、持ちつ持たれつ共存している。今回紹介した煙出し人形の発祥地もエルツ山地だ。同地区の伝統工芸は2019年、世界文化遺産に登録された。

なかでも伝統工芸で最も知られるのはザイフェン。クリスマスには欠かせない木製くるみ割り人形は1870年、この街で初めて作られたという。

ギュンター氏の工房は、創業100年の歴史を誇る。1997年に父から家業を受け継いだ同氏は、従業員7名と共に手作り玩具やクリスマスグッズを制作している。

学者人形制作により従業員の仕事も確保できた。商品受注担当は、現在閉鎖中の地元ホテルに勤務する友人に依頼した。そしてギュンター氏は木工職人の追加募集を呼びかけ、エルツ山地伝統工芸の活性化に取り組んでいる。

ザイフェン伝統工芸協同組合ショールーム   

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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