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中国航海士・笈川幸司

笈川幸司|中国

第12回 わたしの中国日本語教師研修

この一年、中国の高校で、日本語を教えている教師向けセミナーを毎月数回行った。

研修では、よく「学生が、単語や文法が覚えられないことで悩んでいるみたいです。わたしには頭の悪い学生のことが理解できません」という声を聞く。

それは、

「学生が自分の指示に従わないことで悩んでいる教師がいるなんて信じられない。わたしには、そんな教師の気持ちが理解できません」

と言っているのと同じだ。

相手を突き放し、寄り添っていないのだ。

わたし自身、勉強のできる学生ではなかったので、勉強のできない学生の気持ちは、なんとなくわかるのだ。「あの教師は、自分のことを馬鹿にしてるな!」ということもわかっていた。勉強ができなかったが、そういうことには敏感だった。

2001年10月に初めて清華大学の教壇に立ってから、2011年夏まで北京大学と清華大学で教鞭を取っていたが、当時からよく聞かれたことがある。それは、「この両校で、どうして思い切ったことができたのですか?」という内容だ。長い間いろいろ考えたが、恐らくそれは、自分を部外者だと思っていたからできたのだと思う。もしそうでなければ、プレッシャーに押しつぶされ、自分を守ることに疲れてしまい、うまくできなかったと思う。

当事者意識がないのはまずいが、当事者意識が強すぎて、力が発揮できない場合が少なくないのではないか。

自分と価値観の違う人を見て、「理解できない!」と言い、ばっさりいくのは簡単で、そうすることを、効率を考えたら良しとする風潮もあるが、実際に本人に話を聞いてみたら、理解できることが想像以上に多かった。わたしにとっては、よく勉強ができる北京大学や清華大学の学生の考えだが、自分と価値観や生き方の違う彼らの話を聞く経験によって、そこには必ず何らかの理由があり、ちょっとそう思っただけ、あるいは、そう言ったりしているだけで、その言葉すら本音でない場合もあると考えられたのだ。本音で語り合う場面だったとしても、半分建前だと思って聞いていたら、言い争いになることもないと思う。

話を戻そう。

「理解できません」とばっさりやる前に、5分だけでも学生の話を聞いてみたら良いのではないか。「うちには40人も学生がいるんです!無理です!」と考えるなら、今日から1週間、毎日1人ずつ、全部で7人の話を聞いてみれば、7人の話を聞いた時点で、いまの悩みはなくなっていると思う。

学生を理解できないという悩みは、おそらく、学生と向き合い、学生の話を聞かない限り、永遠に解決できないと思う。

最後に、

大学受験を目指す日本語教育への取り組みについては、来月お話いたします!

 

Profile

著者プロフィール
笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。中国滞在20年目。北京大学・清華大学両校で10年間教鞭をとった後、中国110都市396校で「日本語学習方法」をテーマに講演会を行う(日本語講演マラソン)。現在は浙江省杭州に住み、日本で就職を希望する世界中の大学生や日本語スキル向上を目指す日本語教師向けにオンライン授業を行っている。目指すは「桃李満天下」。

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