World Voice

アルゼンチンと、タンゴな人々

西原なつき|アルゼンチン

ネオリベラリズム再来のアルゼンチン。新大統領ハビエル・ミレイ氏就任

ミレイ氏は「最初の2年間は、痛みを伴う改革である」と発言しており、過去の痛みを繰り返すことは必至です。おそらく、過去のリベラリズムよりも大きなダメージとなるのでは、とも言われています。

就任式のスピーチで繰り返し発言していたのは「No hay plata! (お金がない)」ということでした。

(ハビエルミレイ氏の公式インスタグラムより。この夏は「お金がない」Tシャツだ!とのこと)

今、一体誰が得をすることになるのか

企業で働く人々にとってミレイ氏の政策はいつ職を失うかわからない、という恐怖と背中合わせです。

その一方、ミレイ氏を支持する有権者の多くは非正規雇用者であり、自営業者、フリーランス、例えばこの中には、海外の企業と契約しノマドで働いている人々から、デリバリー配達員、ウーバーやTAXIの運転手、YOUTUBERなど、企業に属さずにフレキシブルに働く人々も含まれます。

公務員・会社員など長年勤めている企業をクビになる可能性のない人々にとって、ミレイ氏の政策は痛くはなく、むしろ国内にいながら余計な税金を掛けられずに米ドル収入を得られるようになる可能性もあることなどから、支持している人が多いように思います。

この背景には、アルゼンチンでは自営業者の数がここ20年間で膨れ上がっており、「ネグロ」と呼ばれる非正規に仕事をしている人の数は、正規雇用で就労する人の数(約130万人)を越えているとも言われています。

実際に選挙前、TAXI利用時に運転手と会話しているとほとんどがミレイ支持派でした。

また自由貿易を進めると宣言している通り、ミレイ氏の提案が実現すれば貿易・投資にとっても良い時代となるでしょう。これまでは国内産業を守るための輸出入関税などの為替レートが少なくとも15種類あったうえ、資本、価格、輸出入に無数の統制が導入されており、投資などできる状況ではありませんでしたが、取引はより自由になっていくでしょう。

どのくらい彼のアイデアが議会で承認されて実現していくかにもよりますが、民営化に関しては失業率増加の問題だけでなく、豊富な資源や自然が国の手から離れていってしまうのではないか、またアルゼンチンが誇れることのひとつであった教育や医療のシステムも変化していく可能性も大いにあります。自由貿易が進めば進むほど国内の小さな工業や産業はどんどん潰れていくだろうと思います。

危機的状況で新大統領のポストに就いたミレイ氏。国の為の政治をしてくれることを願います。

 

Profile

著者プロフィール
西原なつき

バンドネオン奏者。"悪魔の楽器"と呼ばれるその独特の音色に、雷に打たれたような衝撃を受け22歳で楽器を始める。2年後の2014年よりブエノスアイレス在住。同市立タンゴ学校オーケストラを卒業後、タンゴショーや様々なプロジェクトでの演奏、また作編曲家としても活動する。現地でも珍しいバンドネオン弾き語りにも挑戦するなど、アルゼンチンタンゴの真髄に近づくべく、修行中。

Webサイト:Mi bandoneon y yo

Instagram :@natsuki_nishihara

Twitter:@bandoneona

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