World Voice

England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

ロンドンで観た東京オリンピック2020

 実際に競技が始まっても、なかなか関心は高まらなかった。もうみんな、夏休みの旅行に夢中になっていたのだ。英国人はホリデーが大好きで、そのために働いているようなところがある。冬からの長いロックダウンの間、ずっと出かけたくてうずうずしていた。やっと海外にも行かれるようになった今は、オリンピックより旅行だったのだ。9月には新しい規制が設けられるという噂だし、今のうちに太陽をたっぷり浴びておきたいのだ(海外旅行は一部規制あり)。

オリンピック期間中おもしろかったのは、海外メディアがこれを機会に日本の社会についてあれこれ取材していたことだ。中でもBBCが伝えたこのホームレスの取材が印象に残った。この動画を見ると、どうしても柳美里の『JR上野駅公園口』を思い出す。この小説は2020年に英訳版(モーガン・ジャイルズ訳)が全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞しているので、英語圏で日本のホームレスへの関心が高まっているのか。

 ところが、チームGB(英国選手団の愛称)がめざましい活躍を見せて、ぞくぞくとメダルを取り始めると流れが変わってきた。見慣れない競技やメダルを獲った選手がご近所の立ち話でも話題にのぼるようになり、マスコミ報道にも熱が入った。やっぱりオリンピックの醍醐味はスポーツそのものとメダルなんだな。時差が逆に幸いして、寝起きで「金メダル獲得!」というニュースが耳に入るとテンションが上がる、という話もよく聞いた。感動のシーンやおもしろハプニングも次々に伝えられた。

 最終的に英国は65のメダルを獲り、メダル獲得数で世界4位に輝いた。この数は前回リオ大会に次いで、英国オリンピック史上2位になるそうだ。今は閉会式を終えて帰国した選手たちの長いインタビュー取材も始まって、7月のサッカーと同じように世間はコロナ以外の明るい話題でにぎわっている(BBCが捉えた東京オリンピック思い出のベストショットあれこれ(英語版のみ)はこちらから)。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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