World Voice

トルコから贈る千夜一夜物語

木村菜穂子|トルコ

ヨルダン観光のすゝめとヨルダンの観光業界をけん引するスゴ腕の女社長

ヨルダンに行くなら必見‼ お勧めの観光地

まずこの社長 Raja さんが作ったヨルダンの紹介ビデオを貼り付けたいと思います。「Authentic Jordan (オーセンティックなヨルダン)」をテーマに、ヨルダンにある「本物」を紹介しています。

世界遺産ペトラ これを外してヨルダンは語れません。ペトラ遺跡は岩でできた遺跡で、あちらもこちらも見渡す限りの岩。実際、ペトラとはギリシャ語で「岩」という意味なのです。野外博物館ともいえるこの観光地、回るのに丸 1 日はかかります。映画「インディージョーンズ - 最後の聖戦」が撮影された場所としても有名です。

DSC00147.JPG筆者撮影 ‐ ペトラ遺跡の有名なアングル

現在一般的に言われているのは、ペトラは西暦前 1 世紀から西暦 1-2 世紀にかけて建設されたアラブ人の一族ナバテア人の王国の首都だったということ。ナバテア人というのはもともと遊牧民族だったようですが、砂漠を横断するキャラバン (隊商隊) の安全を保証することで経済的な見返りを受けるようになり、とても潤うようになりました。ナバテア人は 2000 年以上前にこの地に定住し、切り立つ岩壁を削り、他に類を見ない大都市を建立しました。

岩の表面に施されたファサードといわれる装飾が圧巻です。一番有名なのはエルハズネと呼ばれるこのファサード。岩に一体どうやってこんな精巧な装飾を施したのだろうと思わずにはおれません。ただペトラの岩は「砂岩」と呼ばれるタイプの比較的柔らかい岩なので、装飾が比較的容易だったようです。それにしても、エルハズネの保存状態はとても良く、息をのむほどの美しさです。これは立地的に風の通り道ではなかったことから、風による風化を免れたことによります。

DSC00151.JPG筆者撮影 ‐ ペトラのエルハズネ(宝物庫)

ペトラ遺跡は別名「薔薇色の都市」とも称されます。これは太陽の光を受けて温まった岩がローズ色へと色を変えるため。午後から夕刻にかけて遺跡内は薔薇色に染まります。

ペトラの歴史に関しては諸説ありますし、遺跡では現在も発掘作業が行われています。発掘されるものによっては、これまでの通説がゴロッと覆されることも。ですから、ペトラに関してはまだまだ分かっていないことのほうが多いです。

ちなみに、サウジアラビアには「マダイン・サーレハ」と呼ばれる観光地があります。サウジのマダイン・サーレハもペトラと同じように世界遺産登録されています。とはいえ、サウジのマダイン・サーレハはヨルダンの遺跡の延長。ヨルダンにあるこのナバテア人の王国が現在のサウジまで伸びていたのです。ヨルダンのペトラこそがナバテア人の王国の首都だったという点でまさに Authentic (本物) といえます。

世界遺産ジェラシュ
ペトラと肩を並べるほど人気が高いのが、ジェラシュ。ローマ時代に黄金期を迎えた都市で、デカポリスの1つでした。イタリア以外の場所では、最も保存状態のよいローマ遺跡の 1 つとして広く知られています。当時は「ゲラサ」という名前で知られていました。ジェラシュには「1000本の列柱が立ち並ぶ都市」という別名があり、秩序良く立ち並ぶ列柱は圧巻です。じっくり見ると 3 時間ほどはかかります。

iStock-1139047896.jpgi-Stock ジェラシュ遺跡にあるフォーラム(オーバルプラザ)

ワディラム
ワディラムは、映画「アラビアのロレンス」の舞台ともなった有名な赤い砂漠です。また最近では、ディズニーの実写版映画「アラジン」がこのワディラムで撮影されました。砂漠とはいえ、ごつごつした岩がそそり立っていて月面を思われるユニークな場所であることから「月の谷」とも称されます。

アラビアのロレンスは、自著「七つの知恵の柱」の中でこの砂漠を「vast, echoing and Godlike」と表現しています。日本語では「広大に響き渡るは神の如く」と訳されるこの表現、ちょっと意味が分かりにくいのですが、ここに来られた方なら何となくイメージがつかめると思われるかもしれません。多分ロレンスは、聞こえるものといえば風の音と反響する自分の声しかないこの静まりかえった広大な砂漠を、「神々しいまでに気高い」と表現したかったのでは、と思います。ワディラムの砂漠は本当に静かで、風の音しか聞こえません。

iStock-478291614.jpg

i-Stock ワディラムの砂漠。月面のようにボコボコとした岩が突き出ています。

ワディラムでのアクティビティは、砂漠でのジープツアーとベドウィン仕様のキャンプ場での宿泊です。昨今はラグジュアリーな 5 つホテル並みのキャンプ場も出てきていますが、個人的には砂漠に来たなら砂漠本来の美しさと砂漠ならではの不便さを味わうのが醍醐味なのでは? と思っています。いずれにしてもワディラムを訪れずしてヨルダンを制したとは言えません。

ムジブ保護区 (死海)
ムジブは海面下約 400 メートルに位置する死海の東側にあり、世界で一番低い場所にある稀有な保護区です。日本人のお客様にはまだそれほど知られていませんが、「大人でもはしゃいでしまうアドベンチャースポット」として欧米からのツーリストには人気があります。

ムジブ保護区にあるのは深く険しい峡谷。大きな岩が険しい断崖を形成し、鋭く切れ落ちて狭い谷にそそり立ちます。ペトラのシークを思わせますが、さらに高く険しい!! 谷には四季を通じて涸れることのない澄んだ水の小さな流れがあって、沢山の魚が見られます。春から秋にかけては、この渓谷内でウォータートレイルを楽しんでいただけます。ウォータートレイルとは文字通り、水の中を歩くコースです。ちなみにムジブ渓谷は聖書の中では「アルノンの奔流の谷」と呼ばれています。

RIMG9759.JPG筆者撮影 ‐ ムジブ保護区で楽しめるウォータートレイル

冬場は保護区は閉鎖されますが、保護区に併設されているシャレー (簡易宿泊施設) には年間を通じてお泊りいただけます。死海が眼前に広がる美しいシャレーでのご宿泊は、季節を問わずにお勧めです。個人的には、ここから見る死海が一番美しいと思っています。

RIMG9864.JPG筆者撮影 ‐ ムジブ保護区から見る死海が一番美しいと胸を張って言うことができます。

ネボ山
預言者モーセ終焉の場所と言われています。モーセは死ぬ前に約束の地をこの山から一望し、その後この山で息を引き取りました。天気が良く空気が澄んでいる日には、モーセが見たであろうパレスチナ側の約束の地をここから見渡すことができます。

Nebo.jpgi-Stock ネボ山。ここからパレスチナが一望できます。

ベサニー (アル・マクダス)
イエス・キリストがバプテスマ (浸礼) を受けた場所といわれています。イスラエル側にもイエス・キリストがバプテスマを受けたと呼ばれる場所がありますが、聖書の中ではイエスはベサニーでバプテスマを受けたと特定されています。とはいえ、ヨルダン川の流れは時の流れと共に変わっていますので、もしかするとベサニーは現在のイスラエル側にあったかもしれません。

iStock-680287022.jpgi-Stock べサニー

いずれにしても、聖書時代と同じ名前で呼ばれているという点では「本物」。2015 年に UNESCO の世界遺産リストに登録されました。イスラエル側のイエスの浸礼場所とほぼ顔と顔を向かい合わせており、巡礼目的のツーリストが集団でバプテスマを受けている様子を見ることもあります。またこのエリアはイスラエルとの軍事国境線になっており、イスラエル側が 1 メートルほどの川を挟んで目と鼻の先にあるという不思議な光景。

海面下にあるこの観光地は、死海と同じでアンマン市より常に 10 度ほど気温が高く、夏はとても暑くなります。歩く距離も長いので、夏は朝早くにご観光されるようにお勧めします。

ウンムカイス
ヨルダン北部にあり、ヨルダン・シリア・イスラエルという3カ国を一望できる場所で、イスラエル側の美しいガリラヤ湖の眺めが楽しめます。

DSCN1160.JPG筆者撮影 ‐ ウンムカイスからイスラエルのガリラヤ湖を望む。この日は天気が悪く雨が降っていたので、クリアではありませんが...。ちなみに写真右側の小高い丘は既にシリア領です。

ウンムカイスは、聖書のマルコとルカの記述の中で「ガダラ人の地方」と呼ばれている場所であったといわれています。聖書によると、イエス・キリストはガダラ人の地方のある都市の近くで、悪霊に取りつかれた凶暴な二人の男の人に出会いました。イエスはこの男性たちから悪霊たちを追い出す際、その悪霊が豚の大群に取りつくことを許しました。その結果、豚の群れは突進して断がいからガリラヤ湖に落ち溺死したと書かれています。

ヨルダン国立博物館
ここにアインガザル像が展示されています。アインガザル像は大きいもので 1 メートルほどの高さで人間の形をしており、漆喰と葦で作られています (葦が骨の役目を果たし、外側は漆喰で覆われています)。

アインガザルというのはこの像が見つかった村の名前で、全部で 15 体ほどが発掘されたようです。人間の全身をかたどった像としては最も古いものの 1 つといわれており、一説によれば 9000 年前のものともいわれています (とはいえ、人間をかたどった世界で一番古い像はトルコで発掘されたウルファマンだという意見が大多数です)。

YouTube チャンネルから ‐ 英語ですが、アインガザル像について説明しています。

保存状態が良いのは、この像が長期にわたって飾られていたのではなく、作ってほどなくして埋められていたからではないかともいわれています。ただしこの像の用途は分かっていません。

アムラ城
ヨルダン東部にある「砂漠の城」とまとめて呼ばれる遺跡群の 1 つで、ウマイヤ朝時代のお城の一部です。1985 年にユネスコの世界遺産に登録されました。お城といっても、現在残っているのはハマム (お風呂) とレセプションホールだった建物だけです。この内部には約 1300 年前のフレスコ画が残されており、イスラム初期の芸術を知るうえでとても貴重です。

iStock-490851937.jpgi-Stock アムラ城

フレスコ画には狩りのシーンや動物や果物などと共に女性の裸体が幾つも描かれていて、イスラムの芸術としては「あれ?」と思ってしまう興味深いものです。ウィキぺディアの情報によりますと、「表向きは征服した地の警戒のために建てられたと言われているが、実際には厳格なイスラム教徒の目をそらし、王族達が快楽を享受するための離宮だったと考えられている」そうです。

iStock-1311350953.jpgi-Stock 入浴女性を描いたアムラ城のフレスコ画

知る人ぞ知る人気スポット ‐ ヨルダンにある保護区の数々

さて、主な観光地をざっと挙げました。ヨルダンといえば遺跡、というイメージがかなり固定していますが、ヨルダンの魅力は実は遺跡だけではありません。次に、知る人ぞ知るヨルダンにある幾つかの貴重な保護区についても触れたいと思います。

ムジブ保護区とワディラム保護区についてはすでに触れていますが、ヨルダンにはさらに幾つかの保護区があります。どの保護区もぜひ訪れていただきたいユニークな場所です。石と岩と砂漠...というヨルダンのイメージを覆すような息をのむ風景が眼前に広がります。

ダーナ保護区
ダーナはペトラにほど近いタフィーラという場所にある保護区です。ヨルダンが実は、隠れたトレッキングの名所が散在する「トレッキング王国」であることはヨーロッパ圏のツーリストにはよく知られた事実。トレッキングを楽しめる代表的な観光地が、このダーナ保護区です。

希少な鳥やアイベックスなどの野生動物の住みかでもあり、人手の入らない雄大な自然を楽しむことができます。ダーナの壮大かつ雄大な威風堂々とした風景は、「The 中東」これぞ中東‼ といえるものです。そして岩山に落ちていくサンセットが息をのむほど美しい。

R0012877 (2).JPG筆者撮影 ‐ ダーナの夕焼け

春には小花が咲き乱れ、夏から冬の間はゴツゴツした岩山が色々な表情を見せてくれます。ダーナ保護区には自然を満喫するウォーキングコースがたくさんあり、2 時間ほどのコースから 7 時間ほどのコースまで選択できます。

R0012897 - コピー.JPG筆者撮影 ‐ 暑い時期はこんな青トカゲを見ることもできます。目が覚めるような真っ青な色!

フェイナン保護区
ダーナ保護区から 900 メートルほど下がった海面下にある保護区で、死海から約 16 キロほど内陸に入ったところにあります。ダーナ保護区からトレッキングコースで徒歩 6-7 時間ほどでフェイナンに到達します。夏はかなり暑くなります。

フェイナンには Feynan Eco Lodge (フェイナン・エコ・ロッジ) と呼ばれるエコをとことん追求した宿泊施設があります。建物の中では夜でも人工的な光はほとんど使用されません。レストランもお部屋もすべてキャンドルの灯り。お部屋のトイレのみ、電気が付きます。またロビーだけに限られますが Wi-fi も使えます。 Feynan にもたくさんのウォーキングコースがあり、ヨーロッパからのツーリストは 6 泊など連泊してこの海面下にある保護区を散策したりしています。

iStock-474688124.jpgi-Stock フェイナンにあるエコロッジ

アジュルーン保護区
アジュルーン保護区はヨルダン北部にある観光地で、アジュルーン城からほど近い場所にあります。ヨルダン=砂漠というイメージとは全く異なり、ヨルダン北部では美しい緑を楽しんでいただくことができます。

アジュルーン以北では春の時期に野草が咲き乱れ、「絵のように美しい風景」が広がります。この保護区にも自然を満喫できる幾つかのトレッキングコースがあり、ヨルダンらしくない、それでも実はこれぞヨルダンという風景を楽しんでいただけます。

DSC_0569.JPG筆者撮影 ‐ アジュルーンの風景
DSC_0532.JPG筆者撮影 ‐ アジュルーン保護区で見た野生のシクラメン (だと思います)。その強さと清楚な美しさに惹かれました。

ダーナやアジュルーンといった保護区は、ウォーキングなどのアクティビティが特にお好きではない方でも 1 泊する価値があると思います。筆者のお客様の中にも、初めは特に乗り気でなかったものの、蓋を開けてみるとヨルダン旅行の中で一番お気に入りの場所になったという方が幾人もおられます。物は試しでぜひ行程に含めていただきたく思います。

ヨルダン旅行で古代の人々の息遣いを感じる

古の過去から様々な人が行き交ったこのヨルダンの大地。首都アンマンは発展してすっかり様相を変えていますが、アンマンを一歩出ると、古代からそれほど変わっていないであろう中東独特の風景が残されています。筆者にとってはこの中東の景色こそが「Picturesque」つまり「絵のように美しい」ものです。雄大で雄々しく、何より何千年も変わらないこの風景。ヨルダン旅行で、古代の人々の息遣いを感じることができます。旅先に悩んだら中東へ! ぜひこの魅惑の地にさらに多くの人が足を運んでくださるように願っています。

 

Profile

著者プロフィール
木村菜穂子

中東在住歴13年目のツアーコンサルタント/コーディネーター。ヨルダン・レバノンに7年間、ドイツに1年半滞在した後、現在はトルコ在住4年目。メインはシリア難民に関わる活動で、中東で習得したアラビア語(Levantine Arabic)を駆使しながらトルコに住むシリア難民と関わる日々。

公式HP:https://picturesque-jordan.com

ブログ:月の砂漠―ヨルダンからA Wanderer in Wonderland-大和撫子の中東放浪記

Eメール:naoko_kimura[at]picturesque-jordan.com

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