コラム

トランプ大統領の新型コロナウイルス対策をリバタリアン目線から斬る

2020年03月25日(水)16時30分

リバタリアンは関税に一貫して反対してきた

では、リバタリアンは現在の危機にどのように対応すべき、と考えているのだろうか。彼らの新型コロナウイルス対策のソリューションの1つとして、現在米中貿易戦争についての論争が行われている。

トランプ政権は2018年・2019年を通じて中国に巨額の関税を課し、その市場開放、知財環境改善、産業政策の見直しなどを迫ってきた。そして、新型コロナウイルス問題が発生した後は、中国大陸に立地している医療機器などの製造業の米国回帰を進める動きを強めている。これらは米中覇権争いの一環として実施されているものであり、他国がコロナウイルスの国内感染対策に取り組んでいる間に、米中は全く別次元の戦いを展開していると言って良いだろう。ウイルスの発祥地に関する米中の馬鹿馬鹿しい批判合戦も、それは覇権争い、つまり安全保障政策の延長線上にある鍔迫り合いに過ぎない。

リバタリアンは関税に関しては一貫して反対してきている。そして、新型コロナウイルス対策に関しても関税の害を取り除くことを主張している。なぜなら、トランプ政権が課してきた関税は医療機器の輸入量及びコストに影響を与えているからだ。論争に際してトランプ政権は医療機器の輸入は他の国から代替されることになったと説明しているが、リバタリアン側からは医療機器のコスト高騰に繋がることが治療費に跳ね返る点が指摘されてきた。

実際、新型コロナウイルス問題発生以降、医療製品不足に悩むトランプ政権はリバタリアン陣営が主張してきたようにマスクや人工呼吸器などについて次々と関税を除外せざるを得ない状況に追い込まれている。現在、同政権は医療製品の関税免除を更に拡大するための各種業界との協議を行っている有様となっている。

このようにトランプ政権が中国に医療関連製品を依存する脅威を説く一方、リバタリアンは関税が与える弊害を淡々と述べている。政治的な議論が1つの問題が持つ異なる側面を描写し、それを論争として顕在化させる能力こそ米国の知的な底力と言えるだろう。

米国にはリバタリアンの頑強な政治勢力が存在しており、政府が実施することを全て是とする方向で安易に社会が染め上がることはない。人々が恐怖に慄く危機が発生した時、冷静に淡々と議論を進めるリバタリアンの存在は社会の健全性を保つ上で重要なものだと言えるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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