コラム

「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言葉で伝える文化」と「行動で示す文化」を再考してみた

2025年08月25日(月)18時25分
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

一方、ジョージアにも「მადლობა(マドロバ)」という感謝を表す言葉がある。「恵み」を意味する「მადლი(マドリ)」に語源がある、この言葉には「何かを授かった」というニュアンスが込められている。

しかし、日本とは異なり、ジョージアでは日常生活の中で「マドロバ」が頻繁に口にされることは、あまりない。だからといって感謝の気持ちがないわけではなく、むしろその逆だ。

ただ、口に出して「ありがとう」と言うことに対する心理的ハードルが高いのだ。その理由として、私は次の3点があると考えている。


1つは、「友人とは助け合うもの」という前提があることだ。

親しい関係の中で、相手に何かをしてもらうのは当然であり、そこにいちいち感謝の言葉を挟む必要はないと考えていることだ。むしろ、何かをしてもらった以上は、自分もきちんと返す。そうした無言の相互扶助の感覚が、ジョージアでは根付いている。

2つ目は、ジョージア人の「誇り高さ」である。

気軽に「ありがとう」と言うことで、自分が弱く劣った存在だと思われるのではないか。そんな無意識の防衛反応が働いている場面を何度も目にしてきた。

本来なら感謝を伝えるべき場面でも、その言葉が喉元で止まってしまうことで、時に人間関係や物事の進行の妨げになっていると感じることもある。

日本では「ありがとう」は対等な関係を前提とした言葉だが、ジョージアでは少し違った文脈を持っている。

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・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

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