コラム

日本の欧米信仰の罪深さ...中東で戦争が起きている今こそ、日本にしかできないこととは?

2023年11月25日(土)19時21分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
イスラエル, イスラム教, イラン, ハマス, パレスチナ, ユダヤ教, 日本外交

東京・新宿駅前でのイスラエルへの抗議デモ(10月10日)YUSUKE HARADA―NURPHOTO/GETTY IMAGES

<イスラエルとハマスの戦争においても当たり前のように欧米追従の日本外交。だがイラン出身の筆者は、中東諸国からの尊敬される日本はもっとできることがあるはずだと説く>

イスラエルとハマスの戦いが止まらない。日本にいるとニュースでの扱いも欧米ほどセンセーショナルではなく、遠い地で「またやってるな」というくらいの感想をお持ちの読者もいると思う。

そんななか、芸人のパックンさんが本誌ウェブ版のコラムでイスラエルとパレスチナの問題を扱っていて、アメリカ人からこの問題がどう見えるか、どう語られるかがよく分かって面白かった。だから私は、この問題がイラン人からはどう見えるのかを書いてみたい。

イランは多くの日本人が思い描いている、イスラム国家としての画一的なイメージよりも、実際は複雑な国だ。政治体制はイスラム国家だが、国民の宗教観や社会観はイスラム国家のイメージに縛られない。首都テヘランにはユダヤ系の人もいて、シナゴーグ(ユダヤ教会堂)もある。

イランで人気の米ロックバンドは?


ヒジャブの強制着用に対する抗議デモはあるものの、アラブ諸国と異なり服装はずっと自由で、欧米からの旅行者にも非常にフレンドリー。少し会話を交わしただけで「ウチで夕食を取らないか?」という話になる。私が中学生の時に人気だったのはロックバンドのガンズ・アンド・ローゼズだったし、もしかしたら日本以上に欧米のカルチャーを取り込んでいるかもしれない。

だが、アメリカやイギリスという国家に関する話題になると、話に「もや」がかかる。嫌いとか憎いとかいう感情はないのだが、かといって大好きか、信頼できるかと聞けば、イラン人は曖昧に笑って、困った顔をするだろう。

イラン革命の時にアメリカとイギリスとはいろいろあったし(と私の親世代は言う)、イスラエルが建国されてから中東は戦争が絶えないし(4回にわたる中東戦争)、いろいろ理由をつけてアメリカは何度も中東に侵攻や関与をするし(イラン・イラク戦争や湾岸戦争、イラク侵攻)、仲良くしたくないわけじゃないけど、それじゃ困るなぁ、というのが国民感情である。

しかし、それでも一般人は「困るなぁ」程度の国民感情ではある。イスラエルのパレスチナ侵攻も一般人に大きな犠牲が出ていて非常に胸が痛むのであるが、だからといって過激な抗議活動が広まるわけでもなく、静かに行く末を見守っている。なぜなら、ここまで事態が進んでしまうと、止められるのは国家間のパワーゲームでしかないことを、イラン人はよく知っているからだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 8
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story