コラム

利用しないほうが安上がりの「セカンドオピニオン制度」の穴とは?

2022年11月25日(金)12時32分
トニー・ラズロ(ジャーナリスト、講師)
セカンドオピニオン

JOY10000LIGHTPOWER/ISTOCK

<日本でも定着しつつある「セカンドオピニオン制度」だが、その壁はまだ高く、聞いたことがないという医療機関も。また、原則自費負担で、健康保険が適用されないという問題も...>

「痛い!」。親族が脇腹に激痛を感じ、近所のクリニックに行った。診断結果は尿路結石。運動不足のせいかな、と後悔してももう遅い。食生活を変え、処方された薬を飲むことになった。治療に時間がかかり、親族は半年近くそのクリニックに通っていた。

そんな折、定期健康診断の時期になったので親族は町内の別のクリニックで受けた。すると、なんと尿タンパクの値がかなり高かった。尿と言えば、腎臓。心配! どうなってる? 尿路結石は、より大きい問題の一部にすぎないのでは?

今までの治療方針と同じでいいのかを検討すべきかもしれない。これは僕が親族に付き添い、体験した話。

一般論として、患者には自分の治療に関する選択の自由があり、日本でもしばらく前から「セカンドオピニオン」が定着している。親族はこの制度を使い、クリニックの診断結果や治療法に関して他の医療機関から意見をもらうことを考え始めた。

そのためにはまず、担当医に紹介状の作成と検査資料の提供を申し出る必要がある。でも、これはデリケートな話になる可能性がある。近所のクリニックを信頼していないわけではないが......別の意見も取り入れたい。その気持ちを理解してもらえるかどうか。

クリニックの受付に行って、事情を伝えた。「そこで......セカンドオピニオンをと思って」。すぐさま断られた。「うちではそういうのをやってません」。セカンドオピニオン制度については聞いたことがないと言う。ただし、通常の診察をし、そのついでに別の医療機関への「転院」のための紹介状を作成することなら可能かも、と。

セカンドオピニオンを頼みたいと考えていた大学病院も近いので、その足でそこの総合相談窓口に行ってみることにした。すると、主治医の協力なしではセカンドオピニオンの依頼は受け付けられないと言う。

「困りましたね。確かに、手続きをしてくれないクリニックも時々あります。でも、かえっていいかもしれません」。かえっていい? 「セカンドオピニオン先での診察は自費になりますから」。え、自費? これは初耳だ。

原則として、セカンドオピニオン外来には健康保険が適用されない。病院によって異なるが、その大学病院だと30分間の相談料は2万2000円。話が長引いたら、別料金が発生する。プラス15分で計3万3000円、プラス30分では計4万4000円に。結構な金額だ。

さらに、相談担当医の判断によりCTスキャンやMRI(磁気共鳴映像法)が必要になったら、それぞれ5500円が加算される。一方、その病院に転院すれば、これらの相談や診断は全部健康保険対象になって、3割負担で済む。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米メタ、メタバース事業の予算を最大30%削減との報

ワールド

トランプ氏、USMCA離脱を来年決定も─USTR代

ビジネス

米人員削減、11月は前月比53%減 新規採用は低迷

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 9
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 10
    白血病細胞だけを狙い撃ち、殺傷力は2万倍...常識破…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story