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中東情勢

イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する世界の「6つの衝撃的な真実」とは?

2026年3月2日(月)17時00分
アルモーメン・アブドーラ(東海大学国際学部教授)

【真実4】「戦略的忍耐」の終焉――目的は抑止ではなく「体制崩壊」

かつてのアメリカやイスラエルの攻撃は、イランの「爪を研ぐのを防ぐ(軍備を部分的に削ぐ)」ための、いわば警告でした。それに対し、イラン側も代理勢力を活用し、数時間あるいは数日の猶予を置いて反応する「戦略的忍耐」で応じるなど、破滅的な衝突を回避してきました。


しかし、今回は双方がそのスタンスを放棄しました。イランは今回、即座に反応し、中東に所在する全ての米軍基地を攻撃対象として戦線を拡大するという、前例のない対抗措置を取っています。

アメリカおよびイスラエルによる今回の攻撃の真の狙いは抑止ではなく、イランの現体制打倒です。しかし、イランは多種多様な民族、宗派、文化的背景を抱える国です。体制が崩壊すれば、単なる政権交代に留まらず、国家そのものの分裂と消滅という「存立に関わる脅威」へと直結します。もはや時間稼ぎは通用しない、究極のゼロサム・ゲームが始まったのです。

【真実5】歴史と神話の武器化――「ライオンの咆哮」という心理戦

この戦争は、言葉による「ジャングルの法則」の正当化という側面を持っています。ネタニヤフ首相は、かつてペルシャから追放されたユダヤの指導者が軍を率いて戻り、征服を成し遂げたという神話的な物語を引用し、トランプ大統領はイラク戦争時に多くの苦難をもたらした「解放」という言葉を再び使い、軍事侵攻を美化しています。

そして、この作戦に冠された「ライオンの咆哮(ほうこう)」という名称こそが、すべてを物語っています。

この名は、法や秩序が死に絶え、「狩る者」と「狩られる者」という弱肉強食の論理だけが支配する世界を象徴しています。神話や歴史を動員し、野蛮な破壊を「文明の勝利」として再定義する、高度な心理戦が展開されているのです。

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