最新記事
トランプ政権

トランプ政権の薬物戦争は評価されるのか、それとも疑われるのか

FENTANYL CRISIS AND 2028

2025年12月25日(木)10時50分
サム・ポトリッキオ (本誌コラムニスト、ジョージタウン大学教授)
路上生活を送るサンフランシスコの薬物常用者(2025年3月) TEUN VOETENーSIPA USAーREUTERS

路上生活を送るサンフランシスコの薬物常用者(2025年3月) TEUN VOETENーSIPA USAーREUTERS

<2028年の米大統領選を目指す候補者たちが動き始めるなか、フェンタニル危機は中心的な争点になりそうだ。共和党の「戦争型アプローチ」は、有権者に「決断力」と映るのか、それとも問題のすり替えと見なされるのか。本誌コラムニストでジョージタウン大学教授のサム・ポトリッキオが解説する>


▼目次
まともな研究者ならフェンタニルの「戦争兵器」指定を「嘲笑」する理由
中国側は全て否定した米議会の「指摘」

2028年の米大統領選でダークホースの勝利に賭けるなら、当たれば大きい大穴は米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEO兼会長だろう。金融業界で「アメリカで最も傑出したCEO」との定評があるダイモンは、もし当選の可能性があるなら出馬を検討すると表明している。

そのダイモンがやり玉に挙げているのは、政府債務や経済政策などアメリカの「内なる敵」だ。しかし過去10年間、米政治を支配してきたトランプ大統領は国内の危機を外部要因に責任転嫁すべくベネズエラの船舶への爆撃、メキシコとの国境封鎖、中国への激しい非難と歴史上あまり例のない強硬な取り締まりを行っている。

トランプはフェンタニルを「大量破壊兵器」に指定した。少なくとも外形的には正しい判断と言える。この問題はアメリカが直面した最も危険な薬物の流行であり、18~45歳ではフェンタニルの過剰摂取が死因の首位。薬物過剰摂取による死亡全体の約70%がフェンタニルで、その効力はヘロインの約50倍に及ぶ。一部の推計ではフェンタニルによる年間の総被害額は約3兆ドル。イラク戦争全体の費用とほぼ同額だ。従って薬物危機を国家安全保障上の脅威と位置付けることはトランプ流の誇張表現ではなく、現実の客観的反映にすぎない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

拙速な財政再建はかえって財政の持続可能性損なう=高

ビジネス

トヨタの11月世界販売2.2%減、11カ月ぶり前年

ビジネス

予算案規模、名目GDP比ほぼ変化なし 公債依存度低

ワールド

北朝鮮の金総書記、24日に長距離ミサイルの試射を監
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中