日本全体の自殺者数が減る中で、10代女子の件数が急増している
上記のデータは10代だけを切り取ったものだが、他の年齢層も含めた全体構造の中に位置づけると<表1>のようになる。

2016年から2024年にかけて、国民全体の自殺者数は1割ほど減っている。性別・年齢層別にみても、減っている層がほとんどだが、若い女性だけが目立って増えている。20代女性は1.6倍、10代女子は2.6倍の増だ。近年の社会変化の影響を最も強く受けている、要注意層であると言える。
2010年代半ば以降、子どもの間でもスマホが出回りSNSも普及した。親の目から離れた自分の部屋で、手のひらサイズのスマホを介して、自殺勧誘サイトのような有害情報と接しやすくなっている。生活の「情報化」が、子どもの自殺増につながっているのは確かだろう。
女子の場合、SNSを介した性被害やグルーミング(手なずけ)の被害にも遭いやすい。自身のSNSに自撮り写真をアップしたり、容姿を他の子と比較したりする機会も多くなっており、外見を気にする「ルッキズム」に苛まれてもいる。女子は男子にも増して、SNSで生活態度を不安定化させやすい。
なお女子は、男子よりも自殺未遂者が多い。上記の白書によると、2022~2023年の10代の自殺未遂者は男子が155人なのに対して女子は431人。近年の女子の自殺増は、未遂が「死」に至りやすくなっているためかもしれない。インターネットにより、致死性の高い手段に関する情報を得やすくなっているからだ。
生活苦による「進路の悩み」も
もう一つ、近年の社会変化として大きいのは、物価高による生活苦の広がりだ。わが子を大学に行かせるのが経済的に難しい家庭も増えていると思うが、「進学は諦めてくれ」と真っ先に言われるのは男子よりも女子だ。こんなことを言われると、10代の生徒は過度に思い詰めるものだ。10代の自殺動機の中では「進路の悩み」が上位に挙がっている。進路展望不良が広がっている可能性もあるだろう。学費の減免や給付型奨学金といった、高等教育修学支援制度の情報提供をより一層進める必要がある。大学の側は、安易な学費値上げなどに踏み切るべきではない。
ここで述べたような背景要因については既に認識されており、ネット上の有害環境の除去、グルーミング行為への厳罰化が実施され、「痩せ」を煽るような情報発信を制限することも検討されている。だが10代の自殺急増は続いており、予断を許さない状況が続いている。増分の大半は女子だ。予防対策に際しては「ジェンダー」の視点を据える必要がある。
*相談窓口・予防対策などをまとめた厚生労働省のサイト「まもろうよこころ」
<資料>
厚労省『人口動態統計』





