【ガザ】ハマスが対立勢力を公開処刑──それでも住民が支持する理由
Hamas turns to executions as it tries to establish a monopoly on force in Gaza

10月10日の停戦合意の一環で行われた捕虜交換に立ち合ったパレスチナの武装戦闘員たち(ガザのハンユニス)Abed Rahim Khatib/dpa via Reuters Connect
<停戦発効のガザで暴力を続けるハマスは、ただのテロ組織なのか>
イスラエル軍がガザの一部地域から撤退して以降、ガザではイスラム組織ハマスと他の複数の武装勢力との間の衝突が増加している模様だ。
10月13日に停戦合意が成立して以降、ハマスが他の武装勢力のメンバーを処刑する映像が出回り、それが残虐な方法で行われたこと、また公正な法的手続きを装うことすらなかったことが明らかになっている。
筆者が15年間の研究を通じて築いたガザの関係者、ハマスおよび国際機関職員を含む複数の情報源によれば、多くのガザ住民はこれらの処刑を支持している可能性がある。
ガザの治安調整官事務所の関係者は、こうした「力の誇示」が法と秩序の回復や支援物資の効果的な配分への道を開くと多くの人々が考えていると語った。
こうした心理は、2023年10月のハマスの奇襲と、それに続くイスラエルの報復攻撃以降のガザの現実を映している。
推定3000人のハマス戦闘員が南部イスラエルに侵入し、約1200人を殺害、250人を人質に取った後、2年間にわたってイスラエルは圧倒的な軍事力でガザを攻撃。ガザ保健省の推計によれば6万8000人以上が死亡、17万人以上が負傷した。
イスラエル軍はハマスを壊滅に追い込むと公言し、ハマスの戦闘部隊が姿を隠すと、ガザでは混乱と無法状態が広がった。
だが、ハマスの構成員は今も相当数が生き残っている。停戦発効後、推定7000人のハマス戦闘員がガザ各地に動員された。
ハマスの目的は、この2年間にガザで横行した殺人や人身売買、強盗、麻薬取引といった犯罪行為を公開で苛烈に取り締まることで、治安を回復することのようだ。
2007年の再来
ハマスは、ガザ地区の支配権を確立した2007年と似た状況に直面している。1994年の設立以来パレスチナ自治政府(PA)を支配してきた主要派閥ファタハは、米国の支援を受けて、選挙に勝って発足したハマス政権に対抗した。
武力衝突を伴う約1年の権力闘争の末、ハマスはヨルダン川西岸の支配を失う一方、ガザからファタハを追放することに成功した。その時ハマスが引き継いだ行政機構も、今と同じく崩壊状態だった。
当時もハマスは、力の空白と無法状態に対し、苛烈な手段で武力の独占と治安回復を果たした。各武装勢力を武装解除し、行政機構を整備。一般にその治安部隊や行政機構はかつてのPAによるものより効率的で腐敗が少ないとされた。
ハマスはファタハを含む地区内の他の政治勢力と協力してガザの行政を再建した。多くの公務員や裁判官、警察官はハマスの党員ではなく、入党を求められることもなかった。
ハマス統治下のガザで一定の自由が制限されたことは否定できない。しかし、ファタハが統治するヨルダン川西岸も等しく強権的だった。
「部族」とは何者か
現在のガザで犯罪の中心となっているのは様々な武装組織で、その構成員の多くは地域の有力部族の出身だ。これらの部族は拡大家族であり、伝統的に地域社会で重要な役割を担い、時にマフィアのように振る舞ってきた。
イスラエルとの戦争でガザが無政府状態に陥るなか、部族間の古い怨恨による暴力が復活し、恐喝や麻薬取引、誘拐などの犯罪が増加した。
イスラエルもこうした犯罪に関与したとされる。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、一部の武装組織に武器を供与したことを認めた。報道によれば、イスラエル軍が武器を直接渡したり、拾わせる形で残したりしたとされる。
ハマスが処刑した男たちを「イスラエルの協力者」と呼んだのはそのためだ。部族の最大の連合体である「パレスチナ部族委員会」は、ハマスの取り締まりを支持し、武装組織の犯罪行為を非難した。
ハマスは部族や武装組織に対して武器の引き渡しと自首を条件に恩赦を提案したと報じられている。これまでに、ドグムシュ族とマジャイダ族が応じた。ハマスとの衝突でドグムシュ族の26人が死亡して数日後のことだ。
トランプも容認
ドナルド・トランプ米大統領は、ハマスに「一定期間内での武装解除」を求める一方、「治安回復のための時間的猶予を認める」と発言した。
10月14日、エジプトで行われた中東和平サミットからの帰途、大統領専用機内でトランプは記者団にこう語った。「ハマスは問題を止めたいと明言しており、その姿勢を示している。だから我々は一定期間、彼らに猶予を与えた」
援助を必要とする人々に支援を届けるためには秩序の回復が不可欠だ。また、当面のガザの暫定統治を担う主体も決める必要がある。
だが、イスラエルが部族の武装に手を貸したことは、ガザの不安定化を一層進め、ハマスの苛烈な取り締まりと内乱を助長したとも言える。
状況が悪化すればするほど、ガザの人々は法ではなく超法的暴力による「秩序」を受け入れる可能性が高まるだろう。
Tahani Mustafa, Lecturer in International Relations, King's College London
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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