最新記事
ルポ

「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給与は「最低賃金の3分の1」以下、未払いも

EXPLOITED ABROAD

2025年9月5日(金)18時01分
本田 歩(NNAオーストラリア記者、シドニー在住)
ワーキングホリデー制度を利用してオーストラリアの農場で働く日本人

伊勢は合計10カ所の農場に勤務 COURTESY OF MISAKO ISE

<一部の農場主はワーホリ労働者を「ぼろ雑巾」のように扱っているが、車もお金もない若者は農場から出られない──悪徳ファームで働いた日本人女性が語る衝撃の実態とは?>

円安の日本から、若者がオーストラリアに「出稼ぎ」に行く時代に。しかし一部には「労働搾取」と「悪徳農場」がはびこり、被害にあっても泣き寝入りするしかないという現実が。日本の若者を搾取する「豪ワーホリの闇」を3回に分けてリポートする。本記事は第2回。

※第1回はこちら:「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに

◇ ◇ ◇

オーストラリアに住む日本人向けのフェイスブック・コミュニティーでは、「悪徳ファーム(農場)」に関する情報がたびたび投稿されている。


「悪徳」だと何度か名前が挙がっているのが、クイーンズランド州カブルチャーのイチゴ農場と、ニューサウスウェールズ州コフスハーバー市のブルーベリー農場だ。フェイスブック上で宣伝されている多くの農場では、法律で義務付けられている最低時給の保証がない「歩合制」を採用している。

オーストラリアの地図

ILLUSTRATION BY EKLER/SHUTTERSTOCK

英語力ゼロで渡豪し、都市部で仕事がなかなか見つからなかったという伊勢美沙子(32)は当初、コフスハーバーのブルーベリー農場で中国人や韓国人などと働いた。

1日約8時間収穫作業を行い、歩合給は1キログラム当たり2~2.5豪ドルほど。自分の作業は「平均的なスピードだった」と伊勢は言うが、日給は50豪ドル以下が続いたという。最も稼いだ日の日給(64豪ドル)でも、現在の時給に換算すると約8豪ドルと最低時給の3分の1ほどだ。

勤務先が用意した住居は、日本人3人、韓国人と中国人1人ずつの計5人のシェアハウス。毎週家賃などで130豪ドルを支払うがWi-Fiはなく、シャワーは十分に温水が出ないばかりか、節水のため使用制限も課されるという悪条件だった。

部屋は、シングルベッド1つとダブルベッドが押し込まれた3人部屋で、「スーツケース1個をギリギリ広げられる」スペースしかなかった。

企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中