韓国住宅価格、NYに次ぐ「世界2位」の衝撃 融資規制強化で庶民のマイホーム購入が不可能に
規制のターゲット「ヨンクル族」とは?
住宅担保融資を規制する目的は「ヨンクル族」の阻止にある。ヨンは霊魂、クルは引き出す意味で、ヨンクル族は「住宅価格は上がり続ける」という神話を信じ、あらゆる方法で資金を引き出して「チョンセ」不動産に投資する人びとを意味する。
ソウルの中規模マンションの平均価格は文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足した2017年の8億326万ウォンから政権末期の22年には16億1059万ウォンへと高騰した。現在の李在明(イ・ジェミョン)政権はヨンクル族が不動産価格を釣り上げているとみており、融資を制限することで不動産価格の上昇を抑えたい考えだ。
「チョンセ」は韓国特有の不動産賃貸方式で、賃借人が売買相場の50〜80%を保証金として払い込む代わりに契約期間の家賃はない。少ない自己資金で不動産に投資できる手法として広がった。
たとえば1億ウォン(約1,070万円)の中古マンションを自己資金3000万ウォン(約320万円)で購入し、不足する7000万ウォン(約750万円)は銀行から借り入れると同時にチョンセ住宅として入居者を募集、入居者が払い込んだ保証金で借入金を弁済する。借金はないが、貯金もない状態で賃貸契約期間が満了したら住宅を担保に借り入れて保証金を返還し、次の入居者から預かった保証金で借入金を弁済する。なぜこのような利益がほとんど出ない自転車操業をヨンクル族は繰り返すのか? それは投資した不動産の値上がりを待っているのだ。
貸出規制はカードローンにも
金融当局は7月2日、「年間所得内の信用融資にカードローンを含める」方針を打ち出した。カードローンの住宅購入への利用を防ぐのが目的だ。カードローンの最大上限は5000万ウォンが一般的で、住宅担保融資の不足を補う利用者もいるという。
ところが今回の住宅融資とカードローンの規制に対しては、早くも問題点が指摘されており、不動産価格の抑制にはつながらないどころかさらなる高騰を招くという声もある。
まずは必要な自己資金の増大により住宅購入を断念する人が増える可能性が指摘されている。次が買い替え需要への影響だ。住宅担保融資を受けると6カ月以内の転入が義務付けられるが、買い替える際も、既存住宅の6カ月以内の売却処分が義務付けられる。人気の高い新築マンションの抽選に参加して当選したら転居を考えようという人が少なくないが、6カ月以内に売却する目処がないと住宅融資を受けられず、買い替えを断念せざるを得なくなる。