最新記事
教養

ナイチンゲールの功労の源は「数学」にあった...イギリス政府を動かした画期的な「プレゼン方法」とは?

2025年7月8日(火)17時24分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ロンドン・クリミア戦争碑のナイチンゲール像

shutterstock

<看護師として知られるナイチンゲールだが、実は彼女の功労は数学に支えられていた。病院の環境改善のために政府をも動かした「見やすい数字」はどのようにつくられたのか>

正確なデータを提出しているのに、今ひとつ上司の反応が冴えないということはないだろうか。

数学史ライターのFukusuke氏は、看護師として知られるナイチンゲールは、データを視覚的に示すことでイギリス政府をも動かしたという。Fukusuke氏が執筆した『教養としての数学史』(かんき出版)より、ナイチンゲールが数字を利用して「改善」を訴えた軌跡について解説する。

※第1回はこちら:適切な保険料はいくら?...「86歳で死ぬ」想定、世界初の「科学的な」保険システムを作った「ある計算式」とは?

◇ ◇ ◇

正確な情報の羅列よりも「パッと見」がわかりやすい


2002年の日本の死亡数は98万2371人であった。
2022年は社会の高齢化に伴い、156万8961人であった。
日本の死因トップはガン(悪性新生物)で、2002年のガンによる死亡数が30万4286人だったのに対し、2022年は38万5787人であった

(厚生労働省大臣官房統計情報部「平成14年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」、政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より)


さて、全死亡数に対するガンによる死亡数の割合は、この20年間で増えているといえるのだろうか。単純な問題なので計算すればその答えはわかるだろう。

しかし、次のように円グラフを用いると、視覚的にその答えが理解できる。

newsweekjp20250630082937.png

情報を羅列するよりも円グラフを用いることで伝わりやすさが違うのは明らかであろう。こうしてみるとガンによる死亡数の割合が減っていることが視覚的にわかる。

このようなグラフによるデータの視覚化を、今から150年以上も前のイギリスで行った女性がいた。その女性とは「ランプの貴婦人」こと、フローレンス・ナイチンゲールだ。

経営
「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑むウェルビーイング経営
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日銀短観、大企業・製造業DIは4年ぶり高水準 利上

ビジネス

中国万科、18日に再び債権者会合 社債償還延期拒否

ビジネス

為替は様々な要因を背景に市場において決まるもの=高

ワールド

スペイン、内燃エンジン車販売禁止計画の堅持要請 欧
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中