日曜●アングル:トランプ氏製造業政策の「光と影」、地価高騰など副作用も
写真は米インディアナ州北部のサウスベンドの金属成形会社の工場。3月23日に撮影。REUTERS/Jim Vondruska
Timothy Aeppel Jarrett Renshaw
[サウスベンド(米インディアナ州) 26日 ロイター] - 米インディアナ州北部のサウスベンドで小規模な金属成形会社を営むジョン・アクセルバーグさんは最近、ある大口顧客から設備投資を求められた。大規模太陽光発電所向け鋼製チューブフレームの生産能力を倍増させるために80万ドル(約1億2720万円)を投資してほしいというのだ。
しかしアクセルバーグさんは断った。バイデン前米政権時の税制優遇措置により太陽光事業は昨年好調だったが、他の部門は全て下り坂。しかも今では太陽光事業の先行きに不安を抱いている。
トランプ米大統領は、自身の政策によって「米国では新たな工場ブーム」が起きつつあると繰り返し主張している。しかし、サウスベンドのような工業都市では、現実はそれほど単純ではない。政府の政策は一部の産業をテコ入れする一方で、別の産業では見通しを曇らせ、製造業者の多くは補助金や関税、政府から発せられる一貫性のないシグナルが入り混じった「まだら模様」の環境の中、難しい舵取りを迫られている。
アクセルバーグさんのケースはまさに象徴的だ。トランプ関税の影響で金属材料や輸入部品のコストが大幅に上昇する一方、現政権の政策により連邦政府所有地での太陽光発電所建設が抑制された。
「トランプ大統領が別の大統領令を出して、われわれが受け取った(太陽光の)税額控除を標的にし、取り戻そうとしないという確信が持てない」と、不安を隠さない。
大統領経済諮問委員会(CEA)のピエール・ヤレド委員長代行はトランプ政権の政策が効果を上げている証左として、製造業の生産性向上、新工場や設備投資の増加、製造業雇用の減少ペースの鈍化を挙げる。「ただし、こうした投資は性質上、実際に生産が軌道に乗るまで時間がかかる。大統領の政策の恩恵が全面的に現れるまでには、もう少し時間が必要だ」と訴えた。
<製造業ルネサンスは不発>
米製造業は一部が好調な一方、全体としては停滞感が色濃い現状を最もよく表しているのがサウスベンドだろう。1964年に自動車メーカーであるスチュードベーカー社の巨大自動車工場が閉鎖されて以来、この街は60年以上にわたり産業の再生に苦しんできた。現在も多くの老舗メーカーは現状維持が精一杯で、電気自動車(EV)のようにバイデン前政権の政策で成長した分野ですら後退に直面している。
ボール州立大学の経済学者マイケル・ヒックス氏は「製造業でルネサンスが起きている証拠はない」と断言。むしろ過去10―11カ月間に製造業は下り坂にあるというのが実態だという。
一方、好調な分野のひとつは防衛産業だ。サウスベンドに拠点を置くAMゼネラルは、米国防総省から87億ドル規模の契約を受注し、新世代軍用車両を生産するための新工場を建設した。
また、鉄鋼メーカーのクリーブランド・クリフスは関税による国内鋼材価格上昇の恩恵を受けるはずだ。ローレンソ・ゴンサルベスCEOは2月の決算発表で、関税は「米国を再び強くし、新たな黄金時代と製造業の復活をもたらす」と述べた。
クリーブランド・クリフスの工場から少し離れた場所では、アマゾンが110億ドルを投じ、最終的に30棟からなる巨大データセンターを建設中だ。データセンターは製造工場ではないが、膨大な機械設備や原材料を必要とし、関連産業を潤す。しかしセンターの完成で生まれる恒常的な雇用は多くはない。
さらにアマゾンの建設現場の向かいでは、35億ドルを投じたゼネラル・モーターズ(GM)と韓国サムスンの合弁によるEV用バッテリー工場も建設中だ。
ただ、データセンター建設ラッシュは強い反発も招いている。サウスベンド地域商工会議所のジェフ・レアCEOは、周辺の地価が「異常な水準」に跳ね上がっていると語る。
熟練労働者は不足し、大型開発によって税金や公共料金も上昇している。一方、GM工場は、トランプ氏の反EV政策という逆風に直面。GMは工場の建設ペースを落とし、開業時期の目標も撤回した。
ホワイトハウスは、製造業や技術革新分野への新規投資の一覧を公式サイトで公開しており、リストにはアップルの6000億ドルに及ぶ工場・人材投資計画や、メタ・プラットフォームズが28年までに同額をAI関連インフラに投資する計画などが並ぶ。
それでもサウスベンドでは、20年末以降、製造業雇用が1000人以上減少し、このうち265人はトランプ氏の大統領就任後に消失した。全米でも同じ動きが起きており、米労働統計局(BLS)によると、トランプ政権発足後、製造業の雇用は10万人減っている。
<王の気まぐれ>
確かに、中西部一帯では大型プロジェクトが進行中だ。だが、その多くはバイデン政権期に始動した案件で、半導体工場やEV・電池関連の巨額投資が中心だった。製造業向け建設投資は、21年2月の59億ドルから、24年10月には208億ドルまで増加したが、25年12月には170億ドルに減少した。
「復活と呼べるかどうかは疑問だ」と語るのは、サウスベンド郊外で操業するマスター・ロール・マニュファクチャリングのジョン・ファーガソン最高財務責任者(CFO)だ。同社は製鋼設備の部品製造・再生を手がけているが、売り上げは「好調というより横ばい」だという。
周辺開発の加速は悩みの種でもある。地価上昇で固定資産税が増え、電力や水道料金も上がった。土地の値段が上がるのは悪くないが、売るつもりがなければ意味はない。「この地域では、(データセンター建設ブームに)不満を持っている企業が多い」という。
建設需要に労働力が吸収され、既存工場の設備更新や修理を担う人材が不足している企業もある。1926年創業の工具・金型メーカーを祖業とし、現在は摩擦溶接で独自の地位を築くマニュファクチャリング・テクノロジー社のダニエル・アダムスCEOも「明暗が分かれる状況」だと語る。トランプ政権発足後、EVの重要性が低下する流れが明確になり、自動車関連の仕事が減った。「自動車メーカーや1次サプライヤーが投資を見合わせている」
航空宇宙向けは好調だが、それだけでは会社全体を押し上げるには至らない。新産業の進出は長期的には会社にはプラスだとしながらも、短期的には労働力を巡る摩擦が生じているとも指摘した。「人はきらびやかな職場に流れ、時給が2ドル高いだけで移ってしまう」という。
冒頭のアクセルバーグさんは、工場に隣接する25エーカーの土地で、仕上げ工程や組立工程を拡張するつもりだったが、現在は計画を凍結している。今の事業環境に確信が持てないからだ。「政策が存在しないかのようだ。王の気まぐれにしか見えない」
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