「韓国のトランプ」李在明、ポピュリズムで掴んだ勝利の代償とは?

SOUTH KOREA’S TRUMP

2025年6月6日(金)15時42分
木村 幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授、本誌コラムニスト)

ここで見落とされてはいけないのは、彼らの世界観では、社会を支配する「親日派」の末裔は極めて少数の人々だと考えられていたことだ。

つまりそこでは仮に保守派やその政党が人々からの一定の支持を得ていたとしても、その支持者たちは保守派による政治、経済、社会の統制により、「だまされて」これを支持しているにすぎず、その過ちは対話により修正可能だと理解された。

だからこそ、厳しい保守派との対立の中でも、「国民」に対しては丁寧な呼びかけが行われ、少なくとも形の上では社会の融和の必要が唱えられた。

このような盧や文に連なる人々の世界認識の背後にあったのは、彼らが民主化運動に従事した世界において流行した、当時の途上国の状況を近代資本主義の世界システムの中で理解しようとする「従属理論」的な世界認識だった。

その意味で、盧から文につながる人々の世界観とそれに基づく政治は、一種の時代的産物だったといえる。


同じ韓国の進歩派に属する人物とはいえ、文より10年後に生まれた李は、盧や文が共有した民主化運動の遺産を受け継ぐことができなかった。

だからこそ、民主化運動というスターダムにのし上がる機会を逸した李が政治家として台頭するためには、地方政治家として一つ一つその実績を積み上げなければならなかった。

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出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

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