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荒川河畔の「原住民」(31)

ドヤ街「山谷」に集まる中国の若者たち...36年前の記録

2025年6月3日(火)16時20分
文・写真:趙海成

実は、山谷には2つの対立組織が存在している。それぞれが縄張りを持ち、この巨大な労働市場を操って利益を上げている。

一方は暴力団組織の金町一家、もう一方は山谷争議団(左翼の日雇い労働組合)。警察機動隊は日雇い労働者同士の衝突を防ぐために配置されているそうだ。

私は勇気を振り絞って金町一家の事務所の前を通り過ぎた。ここは確かに異常な雰囲気で、不気味な空気を感じた。

それから、人混みの中で中国人を探し始めた。見分けるのは難しくない。若者は間違いなく皆、中国人就学生だ。なぜなら、日本の若者がここに来ることはほとんどないからだ。

ここが日本社会の「底辺」であることは誰もが知っている。

他の場所、例えば高田馬場の労働市場に行く日雇い労働者の中には、山谷が高田馬場よりも給料が高いにもかかわらず、プライドのために山谷に行くことを嫌っている人がいる。彼らは、「俺は山谷にまで落ちたくない」と言うのだ。

山谷にいる日雇い労働者は「日雇い人夫」とも呼ばれ、彼らは手に「手帳」を持っていて、毎日の労働が記録されている。仕事が見つからない「あぶれた人」なら、これを持っていけば、政府から「あぶれ手当」(編集部注:日雇い労働者の生活安定を目的とする給付金制度の通称。正式には「日雇労働求職者給付金」)を受け取ることができる。

彼らの多くは山谷地区内の1000円ほどの「簡易宿泊所」、通称「ドヤ」に住んでいる。多い時は「ドヤ」は200軒が並び、約1万5000人が宿泊したという。

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