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荒川河畔の「原住民」(31)

ドヤ街「山谷」に集まる中国の若者たち...36年前の記録

2025年6月3日(火)16時20分
文・写真:趙海成

36年前の取材でも南千住駅で降りて山谷地区に向かった

36年前の取材でも南千住駅で降りて山谷地区に向かった

南千住駅に着くと、私は彼らの後ろについて駅を出た。彼らは小走りで、あっという間に私を置き去りにして行ってしまった。彼らにとって、時間は重要だ。1分早く到着することで仕事を得る可能性が大きくなるのだ。

中国人の、物事をゆっくり進める悠然とした習性はここではとっくに消えてしまっている。

私が日雇い労働者だらけの労働市場(編集部注:その日の求人情報が集まり、雇い主と労働者が集まる場所)に着いたときには、あの上海の若者たちは、すでに影も形もなく消えてしまっていた。雇い主に連れられて行ったのか、近くの他の労働市場に行ったのかは分からないが、彼らを追跡できなかったことを残念に思った。

山谷地区は交差する道が多様で、大通りや小道、交差点の脇には日雇いのおじさんたちが並んでいる。彼らのほとんどが古い作業着や時代遅れの普段着を着ている。見かけによらず、話し方が多少乱暴な人が多い。

雇い主と値段交渉をしている者、互いに雑談している者、小さな食堂で朝食を食べている者、壁の下で眠っている者、早朝から酔っぱらって道端に倒れている者など、さまざまな人がいる。ここのアルコール自販機の1日当たりの売り上げは日本でトップクラスだと言われている。

仕事を見つけた人は雇い主と共に去り、仕事を見つけられなかった人(あぶれた人)はがっかりしてその場を離れ、そのまま酔い潰れる人もいる。この地域では酔っ払いが車にひかれる事故が頻繁に起こるという。

午前6時頃、私は武装した警察の機動隊が交差点に整列して待機しているのを見た。

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