最新記事
日本社会

自由に使える「可処分時間」が、10代と子育て世代女性で大きく減少

2025年5月14日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

30~40代女性で自由時間が減っているのは、子育てをしながら(フルタイムで)働く母親が増えているためと思われる。可処分時間のカーブの谷が深くなっていて、子育て期の女性の疲弊がうかがえる。女性の社会進出が進む一方で、家庭内では旧態依然の性役割分業が残っているためだ。それが女性に結婚をためらわせ、未婚化・少子化が進行する一因となっている。

先ほどのグラフでは見づらいが、男女差が最も大きいのは高齢層だ。70歳以上の男性は553分、女性は468分(2021年)。1日の自由時間に85分もの差がある。高齢層では退職している人が多いので、このほとんどは家事時間の違いによると言っていい。<図2>から、高齢夫婦のいさかいの火種のようなものが見えてくる。

newsweekjp20250514015726-c02380d8ef9698694f0d70491124b1b5c376932b.png


配偶者がいる無業高齢者では可処分時間の性差が大きく、1日あたり3時間近くも違っている。配偶者と死別ないしは離別すると、男性の自由時間はマイナス30分、女性のそれはプラス75分。何と言ったらいいか、夫の妻への依存、妻の夫への献身のようなものが見て取れる。性役割分業は、20~30年もの長きにわたるリタイア生活を非常に窮屈なものにする(特に女性)。

可処分所得ならぬ可処分時間に着目すると、社会の歪み(ひずみ)が見えてくる。

<資料>
総務省『社会生活基本調査』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米特使、16日にトルコ入り ウクライナ停戦協議で

ビジネス

物価目標に向け進展、関税で見通しに懸念=ジェファー

ワールド

カタール、ボーイング航空機購入契約に署名 2000

ビジネス

ECB、ドル需要検証を銀行に要請 トランプ政権下で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 3
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 6
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新…
  • 7
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 8
    iPhone泥棒から届いた「Apple風SMS」...見抜いた被害…
  • 9
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 10
    「奇妙すぎる」「何のため?」ミステリーサークルに…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新…
  • 6
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 7
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 8
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 9
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中