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日本社会

自由に使える「可処分時間」が、10代と子育て世代女性で大きく減少

2025年5月14日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
子育て中のリモートワーク

過去25年で子育て世代女性のフルタイム就業は大きく増加している photoAC

<10代では受験勉強時間の増加、子育て世代の女性ではフルタイム就業の増加が原因と考えられる>

人間の生活行動は、大きく第1次~第3次の3つに分かれる。第1次活動は生理的に必要なもので、睡眠・食事・身体のケアといったものが該当する。第2次活動は、仕事・通勤・学業・家事・育児・介護というような、義務的・拘束的性格の強いものを指す。

これらを除いた第3次活動がいわゆる余暇時間で、自由に使える「可処分時間」と呼んでもいい。生活の質(quality of life)を評価するには、可処分所得のみならず可処分時間も見る必要がある。教員不足を解消しようと、教員給与が増額されることとなったが(教職調整額引き上げ)、現場の教員は「カネはいいから時間をくれ」と思っているものだ。


相次ぐ増税もあり、国民の自由に使えるお金は減っているが、時間のほうはどうか。15歳以上の1日の第3次活動平均時間は、1996年では372分だったが2021年では376分。四半世紀で微増だ。だが増えているのは男性で(381分→394分)、女性は減っている(363分→360分)。

年齢も掛け合わせると、国民のどの層で時間的ゆとりが減っているかが分かる。<図1>は、可処分時間の年齢カーブを男女別に描いたものだ。

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この25年間で可処分時間が減っているのは、10代と子育て期の女性であることが分かる。10代は、大学進学率の高まりにより、受験勉強に勤しむ生徒が増えているためだろう。早期受験の広がりの影響もあるかと思う。

現在、子どもの自殺は過去最多となっていて、動機で多いのは学業不振、親子関係の不和、親からのしつけ・叱責といったものだ。少なくなった子どもに過重な期待をかける教育虐待が問題になっているが、子どもの生活からゆとりを奪うことは、当人の生活態度を不安定にし、些細なきっかけで問題行動へと傾きやすくなることに注意しないといけない。

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