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「命より忠誠」ロシア軍をむしばむ暴力の連鎖...兵士はなぜ従い続けるのか

Have They Been Brainwashed?

2025年4月16日(水)15時20分
アメリー・トルビン(ヘルシンキ大学ロシア・東欧研究所客員研究員)

ウクライナ侵攻は、極めて機能不全なロシア社会で「男性的自尊心を回復する」機会を提供し、「社会階層の底辺に位置する大勢のロシア人が、究極の犠牲を払う覚悟を持った国家の真の英雄として浮上する」筋書きを生み出していると、米ジョージ・ワシントン大学国際関係大学院のロシア専門家、マルレーヌ・ラリュエルとアイバン・グレックは指摘している。

だが経済的・イデオロギー的要因は入隊の動機になっても、ミートグラインダー戦術に直面し、上官や同僚兵士による組織的暴力にさらされた後も従い続ける理由にはならない。脱走する兵士もいるが、正確な数は不明だ。


残酷なしごきが制度化

最も納得のいく理由はおそらく、ロシア軍内部に充満し、深く埋め込まれた暴力の文化だ。服従をたたき込んで(被害者、および加害者として)暴力を強化する循環が、兵士のアイデンティティーに組み込まれ、永続化している。

当然視される残酷な行為は入隊と同時に始まり、何度も暴力にさらされるうちに、司令官の戦術を疑うことなく受け入れる心理状態に陥る。習慣的で残忍なしごきや極端な処罰など、過度の暴力が日常化して多くの兵士の「習性」になり、敵味方を問わない暴力のサイクルを持続させる。

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