ノーベル経済学者すら「愚挙」と断じるトランプ関税...トランプは何を勘違いしている?

ABSURD TARIFFS WILL BACKFIRE

2025年4月11日(金)12時50分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

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中国の半導体工場。トランプは半導体分野への品目別関税を導入すると予告している COSTFOTOーNURPHOTO/GETTY IMAGES

今は「元祖タリフマン」のマッキンリー大統領が君臨していた1890年代とも違う。しかしトランプはあの時代が恋しい。4月2日のスピーチでも、「1789年から1913年までのアメリカは関税によって守られ、最高に豊かな国だった」と述べている。

だが当時のアメリカは重工業と農業が中心の発展途上国で、世界の秩序を維持する立場にはなかった。それに現在のビジネス環境も当時とは違う。米企業の世界的なサプライチェーンは複雑化し、複数の大陸に散らばっている。


「世界は変わった」とスティグリッツは指摘する。「製造業の雇用を10%取り戻したとしても、それは労働力全体の1%にすぎない。それで米経済が一変することはない」

スティグリッツは続ける。「しばらく前に中国を見てきたが、あそこには私たちの10倍かそれ以上のエンジニアがいて、政府は科学分野に力を入れている。一方でトランプ政権は科学分野への投資を減らしている。エンジニアがいなければ製造業のリーダーにはなれない。それに、今の製造業が必要としているのは労働者ではなくロボットだ」

サプライチェーンを世界中に張り巡らした米企業にとっては難しい時代だ。アップルをはじめとするアメリカのIT大手は何年も前から、対中関税の影響を回避するためにサプライチェーンをベトナムなど東南アジア諸国に移してきたが、トランプは今回これらの国にも関税を発動した。ベトナムからの輸入品には、今後46%の関税が課されることになる。

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