ノーベル経済学者すら「愚挙」と断じるトランプ関税...トランプは何を勘違いしている?

ABSURD TARIFFS WILL BACKFIRE

2025年4月11日(金)12時50分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

「プラザ合意2.0」案が浮上

このメッセージは、今のアメリカの有権者には受ける。半世紀以上にわたり、共和党も民主党もグローバル化を推進するばかりで、在来の産業や雇用を他国に奪われた中産階級の悲哀には目を向けてこなかった。自由貿易に背を向け、いわゆる「公正な貿易」(関税の引き上げなどで国内の雇用を維持する政策)を唱える政治家はほとんどいなかった。その一方で金融業界への規制は緩和し、低賃金国(とりわけ中国)に製造部門を移転するオフショアリングの動きを助けてきた。

ここへきてトランプ政権のスコット・ベッセント財務長官が唱えているのは「プラザ合意2.0」(トランプの別荘名にちなみ「マールアラーゴ合意」とも呼ばれる)だ。


1985年のプラザ合意では、米英独仏+日本の5カ国が特に円に対してのドル安を促す市場介入で合意している。ベッセント財務長官や経済諮問委員会のスティーブン・ミラン委員長は、高率関税と円高・ドル安のセットでアメリカ製品の競争力を高められると主張している。

この人たちは、今が1980年代とは違うことに気付いていない。トランプが核の傘を閉じようとしている今の時代に、誰がドル安誘導などという話に乗るものか。

そもそも、米ドルが世界の準備通貨という地位を保っていられるのは、それが強くて安定しているからだ。ただしドル高だと輸入が増えて輸出が減るから、結果としてアメリカの貿易収支は赤字基調となる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハマス幹部、停戦協議再開へカイロ訪問 ガザ市では1

ワールド

米企業の現金保有、21年以降半減 高金利受け

ワールド

米スピリット航空、破産手続き脱却後も事業継続に疑義

ワールド

尹錫悦前大統領の妻を逮捕、収賄や株価操作などで 韓
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トランプが「顧客リスト」を公開できない理由、元米大統領も関与か
  • 3
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 5
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 2
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 5
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中