トランプに捨てられ現実を直視...ロシアの脅威を前に「嘆かわしいほど怠慢だった」と反省する欧州は「手遅れ」なのか

DEFENDING EUROPE

2025年4月4日(金)19時58分
エリー・クック(安全保障・防衛担当)、マシュー・トステビン(シニアエディター)

newsweekjp20250404031532-a473d268a7dd0d011bd5297aadb1dbbeadc90902.jpg

大規模演習「ステッドファスト・ダート」でスムルダンに集結した装甲車両と兵士 ANDREI PUNGOVSCHIーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

軍を支えるのは産業だ。スペインのアランチャ・ゴンサレス・ラヤ前外相は本誌の取材に対し、ヨーロッパの防衛産業は必要なレベルに「十分」に到達できると断言した。

チェコの国防当局者も、再軍備に本腰を入れれば「現実的にみて、5年後にはロシアの全面攻撃を撃退できるレベルに達する」と予想する。


1月にNATO軍事委員長を退任したロブ・バウアーは、24年11月、ヨーロッパの防衛産業に「戦時体制に備え、生産・流通ラインを調整する」よう要請した。

ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長は2月、次のように語った。「ロシアの軍事産業の生産力は私たちを上回り、軍事支出はヨーロッパの合計を超えている。ヨーロッパの生産力は依然として、ロシアよりもはるかに低い」

バウアーは「戦闘に勝つのは軍隊かもしれないが、戦争に勝つのは経済だ」と指摘する。

ならばヨーロッパに分がありそうだ。EUとイギリスを合わせたGDPの総額は、ロシアの10倍を超える。だが資金を動かす能力も重要だ。ロシアでは独裁者のウラジーミル・プーチン大統領が戦時経済を握っているが、民主主義国家では政府支出に国民の同意が必要となる。

ヨーロッパの政府支出は世界でも高い水準にあり、防衛費を増やすとなれば国民に大きな負担を強いることになる。防衛費の増額を「世代を超えた課題」とするイギリスも、27年からGDP比2.5%に引き上げると表明したにとどまる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ商工会議所、今年の経済成長ゼロと予想 来年0

ビジネス

日産、通期の純損益予想の開示を再び見送り

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、9月は前月比+1.3% 予想を大

ビジネス

訂正-独コメルツ銀、第3四半期は予想に反して7.9
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中